2017 年 78 巻 2 号 p. 303-307
症例は62歳,男性.心窩部不快感にて近医を受診した.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁に3型腫瘍を認め,生検にて中分化型管状腺癌(tub2)の診断となった.手術は腹腔鏡下胃全摘術を施行した.病理組織学的検査では,腺癌細胞が周囲間質との間に裂隙形成を伴って微小乳頭状増殖する浸潤性微小乳頭癌(invasive micropapillary carcinoma:IMPC)が主体で,tub2の混在も認めた.最終診断は35×30mm,T3(SS),ly2,v2,N2(3/60),Stage IIIAであった.術後補助化学療法としてTS-1を投与し,術後5年間で再発を認めていない.IMPCは乳腺・肺・唾液腺・膀胱・大腸で認められ,リンパ管侵襲およびリンパ節転移を高頻度に伴う悪性度の高い腫瘍であり,予後不良とされている.胃原発IMPCの報告は極めて少ないため,文献的考察を加え報告する.