2017 年 78 巻 3 号 p. 536-541
68歳,男性.15年前に両側鼠径ヘルニアに対して前方アプローチによる手術を施行されている.右下腹部痛と右鼠径部腫瘤を主訴に当科外来を受診した.腹部CTにて,腫大した虫垂と腹壁へ連続した膿瘍を認めた.急性虫垂炎と右鼠径ヘルニアの再発による嵌頓を疑い緊急手術を行った.審査腹腔鏡を施行したところ,腫大した虫垂が中央部でプラグと穿通し,腹壁へ膿瘍を形成していた.プラグは周囲の組織と強固に癒着していた.腹腔鏡下に可及的にプラグを除去し,虫垂を切除した上で,鼠径部より経皮的に膿瘍をドレナージした.術後6カ月経過した現在も膿瘍の再燃は認めない.CTのみではメッシュの同定や鼠径部の詳細な診断は困難であり,腹腔鏡によるアプローチを先行したことで正確な診断を行い得た.治療では,原則としてメッシュを完全に除去すべきである.自験例では,完全には除去できなかったが,原因となる感染をコントロールすることによって治癒しえた.