日本臨床外科学会雑誌
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症例
97歳に発症した虫垂杯細胞カルチノイドの1例
佐々木 愼寺井 恵美森園 剛樹中山 洋渡辺 俊之坂本 穆彦
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2017 年 78 巻 3 号 p. 542-547

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抄録

症例は97歳,男性.腹痛,発熱を主訴として救急搬送となった.来院時,CT検査にて急性虫垂炎と診断されたが,WBC 5,000/μl,CRP 0.38mg/dlで腹部症状も軽度であったため保存的加療となった.しかし翌日,症状が増悪したため虫垂切除術を施行した.術後の病理組織検査にて虫垂杯細胞カルチノイドと診断された.深達度T3であったが,切除断端陰性,脈管侵襲陰性,画像上転移を疑う腫大リンパ節を認めないこと,また超高齢であることから,追加切除や補助化学療法は行わずに経過をみることとした.現在術後1年3カ月,無再発生存中である.虫垂杯細胞カルチノイドは稀な疾患であるが,虫垂炎に対する虫垂切除後の病理検査で診断される場合が多い.その生物学的悪性度から追加腸切除の適応が検討されるが,特に高齢者においてはその対応に苦慮することも多い.高齢者に焦点をあてた文献的考察を加えて報告する.

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