抄録
Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy (PTTM)は,担癌患者において急速に進行する低酸素血症と肺高血圧症を呈する疾患で,病理学的に線維細胞性内膜肥厚を伴う末梢肺動脈の腫瘍塞栓を特徴とする.症例は68歳の女性.来院3週前から労作時呼吸困難を自覚.中等度の肺高血圧症と低酸素血症を認め精査目的に入院.造影CT検査により中枢性急性肺血栓塞栓症は否定され,同CTで左乳癌Stage IV(骨転移)と診断.経過よりPTTMが疑われ,ヨード密度画像にて末梢肺野での灌流低下を認め,PTTMと矛盾しない所見であった.呼吸不全の増悪は急速で,入院第10病日に死亡した.死後に行った肺のneedle necropsyより末梢肺動脈の腫瘍塞栓像と壁肥厚像を多数認め,PTTMと確定診断した.今回,乳癌によるPTTMの症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.