2017 年 78 巻 4 号 p. 836-841
良性多嚢胞性腹膜中皮腫(benign multicystic mesothelioma of the peritoneum;以下,BMMPと略記)は稀な腫瘍で,腹部手術や慢性炎症に起因するとの説がある.腹部手術後に発生したBMMPの2例を報告する.症例1は66歳,女性.S状結腸穿孔にてS状結腸切除・ストマ造設術を施行.5カ月後ストマ閉鎖術施行時,腸管壁・大網・腹膜に無数の小嚢胞を認め可及的に切除.病理診断はBMMPであった.遺残腫瘍の増大を認め,経過観察中である.症例2は57歳,女性.乳癌・肝血管筋脂肪腫の術後経過観察中,右下腹部に嚢胞性病変を認め,増大傾向のため手術を施行.術中所見では結腸壁・肝表・大網・腹膜に多数の嚢胞を認め,完全切除した.術後19カ月現在,再発を認めていない.BMMPは再発が多く死亡例もあり,完全切除と長期的な経過観察が必要である.