2017 年 78 巻 5 号 p. 1073-1076
症例は39歳,男性.2日前より心窩部痛が出現し,症状が増悪したため来院.血液検査で炎症所見を認め,腹部CT検査で急性有石性胆嚢炎と診断し,緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.通常通り4ポートで手術を開始したが,右側肝円索を伴い視野展開が不良で,肝円索を超音波凝固切開装置で切除することが有効であった.また,胆嚢が通常よりも左側に位置しており,Calot三角部の剥離操作が困難であり,胆嚢底部からの胆嚢床剥離を先行し胆嚢を摘出した.結石は胆嚢頸部に嵌頓し,落石の恐れはないと判断し術中胆道造影は行わなかった.術後は合併症なく7PODに退院した.右側肝円索は注意深い術前画像診断で読影可能である.術前から同様な解剖形態の存在を念頭に置き,さらに手術手技の工夫を加えることで右側肝円索を伴った急性胆嚢炎であっても腹腔鏡下胆嚢摘出術を安全に行うことができると考えられる.