2017 年 78 巻 5 号 p. 1117-1121
症例は72歳の女性で,胃通過障害を伴う進行胃癌に対し胃全摘術を行った.術後6日目より発熱が続いたが,器質的な合併症は認めず,中心静脈カテーテルの先端培養と血液培養では菌陰性であった.9日目のCTで腹水の増加を認めたため腹水穿刺を行った.腹水培養でCandida glabrataが検出され,カンジダ性腹膜炎と診断した.β―Dグルカンは39pg/mlと上昇を認めた.Micafunginを100mg/日で投与開始し300mg/日まで漸増した.同時に腹水のドレナージを行ったところ,速やかに解熱傾向が得られた.胃通過障害を伴う胃癌に対して手術を行う際には,胃内容の漏出により真菌性腹腔内感染を生じる可能性のあることに留意する必要がある.術後にカンジダ性腹膜炎を発症した場合には,抗真菌薬投与に加え,感染源コントロールとして腹水をドレナージすることが早期に回復を得る上で重要と考えられた.