第78回日本臨床外科学会総会で特別企画の一つのテーマとして「地域医療における外科診療の実態と問題点」が取り上げられたのを契機に,日本臨床外科学会の全国45支部の支部長を対象に各支部における地域医療の現状と問題点に関してアンケート調査を行った.その結果,すべての支部から回答が得られ,次の点が示された.
現行の臨床研修制度が施行された平成16年以降,全国各地で「外科入局者数の減少→外科医の不足・偏在→地方における外科救急医療体制の破綻」という図式が生じていることが如実に示された.また,近々導入が予定されている新専門医制度が,この外科医の不足・偏在を打開できる可能性への期待度は低かった.
このような状況の中で,若手医師の育成,女性外科医への支援は全ての支部で取り組まれているが,“論文作成”や“QOL(家庭生活)”への配慮は不十分で,女性若手外科医が働き易い環境の不備が浮き彫りとなった.また,若手外科医のモチベーション向上のために日本臨床外科学会が主催する「支部長推薦論文制度」「若手外科医セミナー」「国内外科研修制度」を活用しようとする支部が多かった.