日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
78 巻 , 6 号
選択された号の論文の47件中1~47を表示しています
特別寄稿
  • 上尾 裕昭, 小西 敏郎, 金子 弘真, 炭山 嘉伸, 跡見 裕
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1163-1178
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    第78回日本臨床外科学会総会で特別企画の一つのテーマとして「地域医療における外科診療の実態と問題点」が取り上げられたのを契機に,日本臨床外科学会の全国45支部の支部長を対象に各支部における地域医療の現状と問題点に関してアンケート調査を行った.その結果,すべての支部から回答が得られ,次の点が示された.
    現行の臨床研修制度が施行された平成16年以降,全国各地で「外科入局者数の減少→外科医の不足・偏在→地方における外科救急医療体制の破綻」という図式が生じていることが如実に示された.また,近々導入が予定されている新専門医制度が,この外科医の不足・偏在を打開できる可能性への期待度は低かった.
    このような状況の中で,若手医師の育成,女性外科医への支援は全ての支部で取り組まれているが,“論文作成”や“QOL(家庭生活)”への配慮は不十分で,女性若手外科医が働き易い環境の不備が浮き彫りとなった.また,若手外科医のモチベーション向上のために日本臨床外科学会が主催する「支部長推薦論文制度」「若手外科医セミナー」「国内外科研修制度」を活用しようとする支部が多かった.
原著
  • 吉田 祐, 小練 研司, 呉林 秀崇, 加藤 成, 森川 充洋, 村上 真, 廣野 靖夫, 前田 浩幸, 片山 寛次, 五井 孝憲
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1179-1185
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    当科で経験した急性胆嚢炎症例のうち,抗菌薬投与や経皮径肝胆嚢ドレナージ(以下,PTGBD)を先行し待機的に腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,LC)を施行した130例を対象に,PTGBDの有無や施行時期による周術期成績を後ろ向きに検討した.内訳は軽症78例,中等症52例,PTGBD施行77例,非施行53例.中等症例では,初診時の白血球,CRPがPTGBD施行群で有意に高かったが,出血量,開腹移行率は有意に低値であった.発症からPTGBDまでの時間,PTGBDから手術までの期間を2群に分け,周術期成績を比較した.発症からPTGBDまで48時間未満の群,PTGBDから手術まで14日未満の群で,開腹移行症例は認めなかった.中等症急性胆嚢炎症例に対して安全に待機的LCを施行するためにPTGBDは有用であり,開腹移行率軽減,入院期間短縮や治療コストを考慮すると,早期のPTGBD・LC施行が肝要と考えられた.
臨床経験
  • 川添 准矢, 山田 理大, 山本 道宏, 原田 英樹, 山本 秀和, 財間 正純
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1186-1190
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    胃切除術後合併症の一つである十二指腸断端縫合不全は,ドレナージ不良から重症化し,制御不能な感染や腹腔内出血を続発して致死的な経過をたどる場合がある.われわれの施設では,重症化した十二指腸断端縫合不全例に対してオープンドレナージ術を試み,全例で救命することが可能であった.オープンドレナージ術とは十二指腸断端縫合不全部直上を大きな開放創とし,外筒と内筒からなる二重管により高圧持続吸引をかけることで十二指腸液を完全に体外へドレナージすることを目指す.留置した二重管ドレーンが瘻孔化した後に抜去すれば治癒となる.本法は結果が良好であるばかりでなく,簡便かつ汎用性も高い.当施設で行っているオープンドレナージ術の手技および術後管理について述べ,実際に経験した4症例の治療経過を提示して本法の有効性について報告する.
  • 柳 舜仁, 中野 貴文, 坂下 裕紀, 栗原 英明, 矢永 勝彦
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1191-1195
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎保存治療後の待機的な腹腔鏡下虫垂切除術(laparoscopic appendectomy;以下,LA)が広く普及してきている.本邦の待機的LAにおける虫垂断端閉鎖の手技としては,ループ式結紮器による結紮とendolinear staplerによる縫合切離が主であった.しかし2015年,Double-Shank Titanium Ligation Clips®(以下,DSクリップ;B BRAUN AESCULAP)が日本でも発売され使用可能になった.当院では2015年12月からDSクリップを使用した待機的LAを導入した.
    DSクリップを用いたLAは従来のLAと同様,安全に施行でき,コスト面の改善も期待された.ただし,DSクリップは挿入に12mmポートを要し,創が若干大きくなることと,晩期合併症について今後の検討が必要であることに注意が必要である.
  • 黒田 順士, 久倉 勝治, 田村 孝史, 榎本 剛史, 大河内 信弘
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1196-1200
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    放射線治療後の小腸の放射線性腸炎は,腸閉塞や瘻孔形成をきたし治療に難渋する.側々吻合バイパス術では,瘻孔形成症例において効果が低いこと,また巨大なblind loopを形成することなどが問題となる.近年,回盲部を含めた小腸大量切除が予後良好との報告があるが,手術侵襲が大きく,元来癒着も激しいため困難なことが多い.そこで,責任病巣より口側の小腸を切離し,口側断端を横行結腸に吻合,肛門側断端を皮下に吊り上げることで,上記の問題に対応したバイパス術を施行している.対象は,小腸の瘻孔形成が3例,難治性イレウスが2例である.手術では放射線の影響がないと思われる口側小腸を切離し,口側の断端を横行結腸へ吻合,肛門側の断端を皮下に吊り上げた.術後は全例経口摂取が可能となった.5例中1例で盲端の拡張を呈し,局所麻酔下で吊り上げた盲嚢腸管へのイレウス管挿入・ドレナージ継続を要した.文献的考察を加えて報告する.
  • 武田 正, 片岡 正文, 河本 洋伸, 丸山 昌伸, 新田 泰樹, 赤在 義浩
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1201-1206
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    大腸癌の肺門・縦隔リンパ節転移は予後が極めて不良とされ,手術の治療効果は明らかでは無い.今回,2001年1月から2014年12月までに当院にて大腸癌手術を行い,その後,肺門縦隔リンパ節転移に対して外科的切除を行った11例を対象とし,臨床経過,予後について検討した.大腸癌初発時の平均年齢は62歳,StageはI/II/III/IVが1例/2例/5例/3例であり,二期的手術を含め全てR0手術となった.初回手術から肺門縦隔リンパ節転移手術までの期間は平均39カ月で11例中9例では異時性ないし同時性に肺転移を有していた.4例は無再発生存中で,3年生存率は70%,5年生存率56%と良好であった.死亡4例の生存期間の平均は25.6カ月(中央値22カ月)で肺切除後比較的長期生存していた.集学的治療のmodalityとして肺門・縦隔リンパ節転移の切除が適応となる症例が存在すると考えられた.
症例
  • 坂田 治人, 清水 英一郎, 藤田 和恵, 山口 有輝子, 鈴木 孝雄, 松原 久裕
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1207-1212
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    フッ化ピリミジン系抗癌剤(以下5-FU)は体内でdihydoropyrimidine dehydrogenase(DPD)によって代謝され,DPD欠損や活性低下例では重篤な副作用を発症する.今回,CapeOX投与後に重篤な副作用を呈して死亡した症例を経験した.症例は58歳の男性.先天性小児麻痺を罹患,PS0.主訴は全身倦怠,食欲不振.現病歴はDay7までcapecitabineを内服後,摂食不良と脱水で入院.入院時Grade3口内炎と下痢,好中球減少を認めcapecitabine最終内服9日目から発熱性好中球減少症とGrade3口内炎を認めた.Nadir後状態改善し53日目に経口開始したが発熱,頻脈,意識レベル低下し,突然心停止となり死亡された.末梢血単核球DPD活性値は4.47U/mgと低値を示し,DPD活性低下症と診断された.5-FU投与時は副作用に注意し,本症例の早期発見に努める必要がある.
  • 関根 隆一, 根本 洋, 田中 淳一, 原田 芳邦, 横溝 和晃, 塚本 裕之, 大池 信之
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1213-1219
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.食欲低下と体重減少を主訴に受診し,4型胃癌に対し胃全摘術を行った.5PODに敗血症とDICが発症し抗生剤投与,DIC治療を開始した.しかし,薬物治療は奏効せず,特に血小板減少は重篤で連日の血小板輸血を要した.さらに,18PODにARDSが発症し人工呼吸管理を要した.臨床症状より血球貪食症候群(以後,HPS)を疑い,診断基準項目を満たしたためPSLを開始した.敗血症と血小板減少は劇的に改善し67PODに退院となった.PSLは漸減し外来で終了した.1カ月後に癌性腹膜炎の疑いで入院したが,再度ARDSが発症したことからHPSの再発と診断し,ステロイドパルス療法を行うも改善せず死亡した.臓器移植を除き,手術後のHPSは本例で15例目であった.HPSの本態は高サイトカイン血症と考えられるが,術後合併症としての認知度は低く診断に至らない症例もあると考えられ,注意を要する.
  • 上野 望, 伊藤 淳, 三谷 絹子, 加藤 広行
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1220-1224
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.右乳房の硬結を自覚し近医を受診した.1カ月後に右乳房の発赤と腫脹の増大,さらに左乳房にも発赤を伴う丘疹が数箇所出現し,炎症性乳癌の鑑別も含め当科紹介となる.超音波所見上は明らかな腫瘤像は認めず,皮膚の著明な肥厚と皮下脂肪層のエコーレベルの上昇およびリンパ管の拡張を認め,炎症性乳癌を示唆する所見であった.穿刺針生検でdiffuse large B-cell lymphomaに相当する悪性リンパ腫の診断となり,右乳腺原発悪性リンパ腫の診断で血液内科に紹介となった.PET検査で肝・脾・骨浸潤を認め,国際予後因子の高中危険群のため,R-CHOP療法施行し,今後,自家末梢血幹細胞移植を行う予定である.臨床経過・画像所見から炎症性乳癌を強く疑う乳腺原発悪性リンパ腫を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
  • 田中 寛, 後藤 康友, 南 貴之, 長尾 拓哉, 毛利 康一, 宮田 完志
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1225-1229
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    59歳,女性.6カ月前より左乳房腫瘤を自覚していたが放置していた.腫瘤からの出血にて当科初診.20cm大の腫瘍が自壊し出血しており,針生検で葉状腫瘍と診断した.その後1カ月で30cmまで急速に増大,低栄養と貧血にて入院.中心静脈栄養と輸血を行った後,初診より2カ月で単純乳房全摘術を施行,腫瘍重量は3,400gだった.術後は創感染以外は良好であり,術後31日に退院.切除標本では,線維性間質と上皮の増生からなる葉状部分,間質の充実性増生からなる部分があり,間質の充実性増生部分で高度な異型細胞が認められ,骨肉腫と横紋筋肉腫の像も伴っていた.多彩な組織像を示す悪性葉状腫瘍と診断した.術後1年のPET-CT検査でFDG集積を伴う縦隔・右鎖骨上リンパ節腫大あり,転移と診断した.ドキソルビシン投与を行った後に放射線照射を施行,転移巣は縮小した.5年6カ月経過したが無再発である.
  • 黒野 健司, 川島 太一, 河上 牧夫
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1230-1235
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.健診にてDCIS(ductal carcinoma in situ)と診断され乳房切除術+センチネルリンパ節生検が施行された.術後療法は選択されなかった.術後3年目に多発骨・肝・腹腔内リンパ節転移を認めた.THP(ドセタキセル60mg/m2+トラスツズマブ8(6)mg/kg+ペルツズマブ840(420)mg/body)+ゾレドロン酸(4mg/body)が12サイクル施行され内臓転移についてはCR(臨床的完全奏効)を認めた.予後良好とされているDCIS症例においてこのような稀な症例を経験したので,文献的考察を加え今後のDCISの治療マネジメントについて考察した結果,DCISについてもinvasive ductal carcinomaに準じた薬物療法が必要に応じ実施されるべきであると考えられた.
  • 福岡 恵, 木村 桂子, 木村 充志, 米山 文彦, 芥川 篤史, 河野 弘, 佐竹 立成
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1236-1242
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    今回著者らは,稀な肺腫瘍塞栓症の1例を経験した.症例は62歳,女性.平成6年9月に左乳癌に対して乳房切除術を施行し,病理組織診断はPaget病,pT1micN0M0 Stage IAであった.平成21年7月に検診で胸部異常影を指摘されて受診.CTで腋窩・鎖骨上窩・縦隔リンパ節腫大を認め,生検結果よりリンパ節転移再発,ER・PgR陰性,HER2陽性と診断し,PaclitaxelおよびTrastuzumab療法を開始した.4サイクルでPRを得られたが,患者が化学療法の継続を拒否し,通院を自己中断した.平成25年1月に労作時の息切れを自覚して入院し,心臓カテーテル検査で肺高血圧症を認めた.原因不明の肺動脈微小血栓症の疑いで抗凝固療法を開始したが無効で,入院第4病日に呼吸状態が悪化し死亡した.病理解剖の結果,肺の細動脈・肝臓・甲状腺・骨髄の細血管内に癌細胞の浸潤を認め,肺腫瘍塞栓症と診断した.
  • 吉村 健司, 岡本 啓太郎, 河島 毅之, 和田 朋之, 首藤 敬史, 宮本 伸二
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1243-1247
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    86歳,女性.主訴は労作時呼吸困難.上行大動脈から腹部大動脈に及ぶ広範囲重複大動脈瘤を認めた.広範囲重複大動脈瘤に対し,上行弓部大動脈置換術,腹部デブランチ,胸部ステントグラフト留置術(TEVAR)の三期分割の方針とした.弓部置換時に左室ベントによる心尖部穿孔をきたし,フェルト補強で修復術を施行した.退院後,心尖部から左前胸部にかけて膿瘍を形成し,抗菌薬治療を開始した.2回の排膿ドレナージ術を施行したが,膿瘍は消失しなかった.各種培養は陰性であり,無菌性膿瘍として保存的加療では治療に難渋したため,心尖部大網充填術と腹部デブランチを同時施行した.術後経過は良好で,残存瘤に対しTEVARを施行することが可能となり,広範囲重複大動脈瘤の治療を完結できた.
  • 岡元 崇, 木村 龍範, 久米 正純
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1248-1251
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.労作時息切れにて近医を受診し,心臓超音波検査の結果,大動脈弁口0.51cm2,左心室-大動脈の圧格差は最大93mmHg,平均41mmHgの重症大動脈弁狭窄症を認めた.人工心肺使用下に大動脈弁置換術を行ったが,既往歴にクリオグロブリン血症性紫斑病を有していた.クリオグロブリン血症の患者は寒冷刺激によって塞栓症を起こすことがあるため,手術では通常の中等度低体温法ではなく,常温体外循環下で手術を行い,さらに,常温順行性間欠的冠灌流法と逆行性持続的冠灌流法にて心筋保護を行った.その他,ブランケットでの加温などで体温を37℃以上に保った.周術期に重篤な合併症を起こすことなく術後19日目に退院となった.周術期に血漿交換は行わなかった.
    比較的稀なクリオグロブリン血症を有する重症大動脈弁狭窄症に対する常温体外循環下での手術例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
  • 阿部 貴文, 岡本 啓太郎, 首藤 敬史, 和田 朋之, 穴井 博文, 宮本 伸二
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1252-1255
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性.生後すぐにポリオに罹患し,以後右下肢麻痺のため右松葉杖を長期に渡り使用していた.検診で右腋窩の腫瘤影を指摘された.その後,右上肢の痺れ・疼痛が出現したため精査したところ,右上腕動脈瘤と診断され当科紹介となった.CT検査で25×22mm大の右上腕動脈瘤を認めた.瘤内は血栓閉塞していたが,前上腕回旋動脈を介した良好な側副血行により末梢の血流は維持されていた.手術は上腕動脈瘤切除のみを行い,橈骨・尺骨動脈の血流不全はなかったためバイパス手術は行わなかった.上腕動脈瘤は稀な疾患ではあるが,破裂や塞栓症を引き起こすことが知られており手術加療が必要である.
  • 村瀬 勝俊, 関野 誠史郎, 木村 真樹, 関野 考史, 土井 潔, 川田 紘資, 五島 聡
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1256-1261
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.意識消失をきたしCTで腹腔内出血を認め当院に緊急搬送された.
    CTで後上膵十二指腸動脈(PSPDA)瘤破裂による腹腔内出血を認めた.また,正中弓状靱帯症候群(MALS)による腹腔動脈狭窄と前下膵十二指腸動脈(AIPDA)瘤,脾動脈瘤を認めた.PSPDA瘤破裂に対し緊急IVRによるコイル塞栓術を行った.
    PSPDA・AIPDA瘤の原因はMALSと考えられることから,MALSに対する正中弓状靱帯切開術を行う方針としたが,正中弓状靱帯切開により腹腔動脈系の血圧上昇から脾動脈瘤の拡大が懸念されたため脾摘術も行い,その後AIPDA瘤に対するIVRを行う方針とした.腹腔鏡補助下に脾摘出術を行い,その小切開創から弓状靱帯切開術を行った.その後,AIPDA瘤に対するIVRにてコイル塞栓術を施行した.発症から10カ月現在,腹腔動脈の狭窄は消失し動脈瘤の再疎通は認めていない.
  • 福永 亮朗, 植村 慧子, 笹村 裕二, 村上 慶洋, 阿部 紘丈, 宮坂 衛
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1262-1266
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    Birt-Hogg-Dubé症候群(以下,BHD症候群)は皮膚の線維毛包腫,腎腫瘍,肺嚢胞を3徴候とする常染色体優性遺伝の遺伝性疾患である.症例は57歳の男性で,呼吸困難を主訴に当科外来を受診した.13年前に左自然気胸に対する手術の既往があった.胸部X線写真で右気胸を認め,CTで両側肺野に下肺野縦隔側優位で薄壁な,多発肺嚢胞を認めた.胸腔ドレナージにて改善を認めなかったため,胸腔鏡下肺部分切除術を行った.また,顔面・上半身に多発する丘疹を認め生検を行ったところ,線維毛包腫であった.以上より,BHD症候群を疑い遺伝子検査を行ったところ,FLCN遺伝子エクソン11における変異を認め,確定診断した.その後,現在まで気胸の再発や腎病変の出現なく経過観察中である.BHD症候群はまれな疾患であるが,腎悪性腫瘍の発症や,家族発症の可能性があるため,気胸の鑑別疾患として重要であると考えられた.
  • 城所 嘉輝, 鈴木 喜雅, 門永 太一, 吉田 春彦, 中村 廣繁
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1267-1271
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.数十年前に神経線維腫症1型を指摘.左大腿部の悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor:MPNST)に対して整形外科で広範切除後,66Gyの照射を施行.術後6カ月の胸部X線で左上肺野に2cm大の結節を指摘され,胸部CTでは左上葉S1+2に17×14mmの充実性結節を認めた.局所再発は認めず,孤立性の左転移性肺腫瘍が疑われ,胸腔鏡下肺部分切除を施行した.腫瘍は葉間胸膜から下葉へ浸潤しており,S1+2およびS6を部分切除した.病理組織検査よりMPNSTの肺転移と診断したが,補助療法は行わなかった.術後2カ月で左肺および胸壁に再発を認め,緩和治療として疼痛コントロール等を行ったが,病状が進行し,肺切除後約4カ月で永眠した.
  • 長山 裕之, 石井 博, 高瀬 健一郎, 大畑 昌彦
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1272-1275
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.他院にて食道癌に対し胸腔鏡腹腔鏡下食道亜全摘,後縦隔胃管再建術を施行された35カ月後,腹痛と嘔吐を訴え当院に入院した.CTにて左胸腔への腸管の脱出を認め,横隔膜ヘルニアと診断し手術を施行した.挙上胃管左側の食道裂孔をヘルニア門として横行結腸が左胸腔内に脱出していた.脱出腸管の血流は良好であった.ヘルニア門の横隔膜部を縫縮,胃管と横隔膜脚は縫合せず,縫縮部を含めたヘルニア門全体を大網にて被覆した.経過は良好で術後22日目に退院し,術後76日目に癌性胸膜炎にて死亡するまで再発は認めなかった.文献によれば,食道癌術後の横隔膜ヘルニアは,増加傾向にあり,術後長期にわたり発症の可能性があり,生命を脅かす可能性もある合併症であることが示唆された.
  • 百瀬 博一, 阿部 展次, 橋本 佳和, 正木 忠彦, 森 俊幸, 杉山 政則
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1276-1281
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.胃体上中部領域cStage IA胃癌に対し腹腔鏡補助下胃全摘術(D1+郭清,Roux-en-Y吻合)を施行.術後合併症なく経過し,術後9日目に退院した.退院後16日目に吐血,タール便を主訴に来院した.腹部造影CT検査では,食道空腸吻合部近傍に造影剤の貯留と左胃動脈切離断端に仮性動脈瘤を認めた.以上より左胃動脈仮性動脈瘤破裂(食道空腸吻合部穿破)と診断し,腹部血管造影検査を行った.腹腔動脈造影では,左胃動脈切離断端に仮性動脈瘤と造影剤の血管外漏出を認め,コイル塞栓術を行った.塞栓術後に再出血なく経過し,18日日に退院した.自験例では,胃切除術後に仮性動脈瘤形成の成因となりうる縫合不全や膵瘻はなく,術中のエネルギーデバイスによる動脈壁損傷あるいはクリップの逸脱が関与したことが推察された.腹腔鏡下胃切除術においては,仮性動脈瘤形成があり得ることを念頭に置いた対応が必要と考えられた.
  • 林 憲吾, 奥田 俊之, 平沼 知加志, 加藤 洋介, 小竹 優範, 原 拓央
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1282-1287
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.約4kgの小型犬を抱き上げた際に発症した左上腕骨骨折を主訴に来院した.精査にて幽門部,幽門前庭部に重複胃癌を認め骨転移が疑われたが,骨シンチグラフィーは代謝性骨疾患を疑う所見であった.骨接合術を行った際に採取した骨組織病理診断は悪性所見を認めず,また採血でPTHrP,Caの上昇とPTHの低下を認めたため,PTHrP産生胃癌によるhumoral hypercalcemia of malignancy(以下,HHM)とそれに伴う異常骨折と診断し,幽門側胃切除術を施行した.補助化学療法としてS-1投与を行い術後3年半が経過したが,再発は認めていない.HHMを合併した胃癌の予後は厳しいとされているが,報告例と比較し本症例は長期生存が得られていた.その理由として,本症例はPTHrPの上昇が過去の報告例と比べ穏やかであったことが考えられ,PTHrPが予後の指標となる可能性が推察された.
  • 佐々木 愼, 原田 真悠水, 尾崎 公輔, 中山 洋, 渡辺 俊之, 坂本 穆彦
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1288-1291
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.糖尿病性腎症による末期腎不全にて維持透析を受けている.スクリーニングの便潜血検査で陽性を指摘され上部内視鏡検査を施行したところ,胃前庭部小彎前壁寄りに約3cmの不整な潰瘍性病変を認め,生検にて腺癌の診断であった.CT検査で胆石,総胆管結石を認めたため,まず総胆管結石に対してESTを施行後,幽門側胃切除術および胆嚢摘出術を施行した.術後の病理組織検査にて中分化型管状腺癌の深層の粘膜下層を中心に早期の胃内分泌細胞癌を認めた.免疫組織学的検査ではCD56に陽性を示した.Stage IAの診断であった.現在術後3年,明らかな再発所見なく生存中である.胃内分泌細胞癌は稀な疾患であるが,早期より高度な脈管侵襲をきたし,極めて予後不良である.今回われわれは,末期腎不全患者において診断された早期胃内分泌細胞癌を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 金田 明大, 山田 兼史, 横溝 博, 平田 稔彦
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1292-1296
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    難治性腸管皮膚瘻に対して,大腿筋膜移植と腹直筋弁形成により治癒しえた症例を経験したので報告する.症例は85歳の男性.他院で早期胃癌に対し幽門側胃切除術(Roux-en-Y再建)を施行された.術後7日目に汎発性腹膜炎の診断で当院紹介となった.術後膵液瘻による十二指腸断端瘻と汎発性腹膜炎に対し,開腹ドレナージと腸瘻造設を施行した.経過中,上腹部正中に胃空腸吻合部遠位の挙上空腸による腸管皮膚瘻を形成し,唇状腸瘻の状態となった.腹腔内の炎症と癒着が軽減した後に,瘻孔閉鎖と大腿筋膜移植および皮弁形成を行った.術後3日目に食事を開始したが,術後9日目に皮弁部からの消化液の漏出を確認し,腸管皮膚瘻の再発を認めた.再度炎症と癒着の沈静化を待って,腸管皮膚瘻の瘻孔閉鎖と腹直筋弁移植を行った.再手術後27日目に食事を開始し,再発なく治癒しえた.
  • 伊藤 喜介, 平松 和洋, 加藤 岳人, 柴田 佳久, 吉原 基, 青葉 太郎
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1297-1302
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈解離は稀な病態であり,時にステント留置を要する場合がある.孤立性上腸間膜動脈解離に対し,ステント留置を施行し,その後,遅発性小腸狭窄を引き起こしたため単孔式腹腔鏡下手術にて切除し,治癒した症例を経験したので報告する.
    症例は54歳の男性.食後突然発症した腹部の激痛にて救急搬送された.造影CTにて第一空腸動脈分岐部より末梢に造影効果を認めなかった.上腸間膜動脈造影にて,上腸間膜動脈解離と診断し,ステント留置を行った.末梢の血流は再開し,壊死は免れたが,小腸狭窄によるイレウスを発症したため,第34病日に単孔式腹腔鏡下小腸切除術を施行した.術後経過は良好で,術後約25カ月経過したが,解離腔の増大や小腸狭窄は認めていない.上腸間膜動脈解離に対しステント留置が奏効した場合でも,早期合併症だけではなく,遅発性腸管狭窄が発症する可能性を念頭に置いたフォローアップが必要であると考えられる.
  • 河毛 利顕, 加納 幹浩, 檜原 淳, 向田 秀則, 平林 直樹, 金子 真弓
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1303-1311
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    神経鞘腫の混在した虫垂粘液嚢胞腺癌の巻絡による絞扼性腸閉塞の1例を経験したので報告する.症例は80歳の男性で,2016年7月,腹痛と嘔吐を主訴に近医を受診し,腸閉塞の疑いで当科に紹介となった.腹部は膨満しており,腹部全体に軽度の圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.CT所見では,回腸はclosed loopを形成し,腸管との連続性をはっきり追求できない造影効果不良な腫瘤像を認めた.何らかの索状物による絞扼性腸閉塞と考え,緊急手術を施行した.虫垂先端は腫大し,虫垂自体が回腸に巻絡し絞扼性腸閉塞を発症していた.回腸は血流障害のみで腸管壊死には至っておらず,回腸は温存し,虫垂切除術を施行し手術を終了した.術後病理検査で,神経鞘腫の混在した虫垂粘液嚢胞腺癌の診断で,2016年9月,回盲部切除術を施行した.絞扼性腸閉塞の場合,虫垂自体が絞扼帯となり得ることを念頭に置くべきであると考えられた.
  • 高市 翔平, 森本 芳和, 藤井 弘通, 畑中 信良, 平尾 隆文, 山崎 芳郎
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1312-1317
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    右外腸骨動静脈に浸潤した盲腸癌に対し,血行再建を先行させ,血管合併切除を伴う結腸右半切除術を施行した症例を経験した.症例は64歳,女性.主訴は食思低下.画像検査にて,右外腸骨動静脈に浸潤する盲腸癌を指摘された.イレウス症状が改善せず,回腸-横行結腸バイパス術を施行した.抗癌剤治療に高度有害事象が出現し,また消化管出血による貧血が進行したため,血管合併切除ならびに再建を伴った腫瘍切除が必要と判断した.左右大腿動脈間に人工血管を用いたグラフトバイパス術を先行させたのち,術野を分離し,右外腸骨動静脈および右卵巣合併切除を伴う結腸右半切除術を施行した.腫瘍近傍の播種結節を含めた広汎切除郭清を行い,T4b,N1,M1(P1),stage IV,R0であった.術後腹腔内膿瘍,胆嚢炎,創感染をきたしたものの,グラフト感染には至らず,術後71目に退院した.
  • 中山 馨, 滝浪 真
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1318-1325
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    虚血性大腸炎は,腫瘤や狭窄を形成して悪性腫瘍に類似した所見を呈することがある.長期間の保存的治療で症状が改善しうるが,腸閉塞症状をきたす症例や癌と鑑別できない症例では,外科的治療の適応とされている.今回われわれは,上行結腸に発症し,外科的治療を要した狭窄型虚血性大腸炎の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は81歳の男性.腹痛の原因精査目的で施行された下部消化管内視鏡検査で,上行結腸の全周性狭窄病変を指摘された.内視鏡下生検組織診断では組織採取が不十分で診断がつかなかったが,腫瘍マーカーは陰性で,腹部造影CT検査で炎症性変化を疑われ,保存的に経過観察を行う方針となった.その後,狭窄による穿孔の不安から食事摂取不良となったため,回盲部切除術を施行した.切除標本の病理組織所見で循環障害性粘膜障害に起因した粘膜下層の線維化を認め,狭窄型虚血性大腸炎と診断された.
  • 御井 保彦, 小濱 拓也, 浦出 剛史, 村田 晃一, 沢 秀博, 黒田 大介
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1326-1331
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.大腸癌検診にて便鮮血陽性を指摘され,当院を受診した.下部消化管内視鏡検査にて上行結腸に2型病変を認めた.術前の生検では高分化から中分化型管状腺癌の診断であり,腹腔鏡補助下右半結腸切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査では,腺癌と神経内分泌細胞癌が混在していた.腫瘍内の各々の占拠範囲は30%以上を占めており,mixed adenoneuroendocrine carcinoma(以下MANECと略記)と診断した.術後補助化学療法としてCDDP+etoposide(VP-16)を4コース施行し,術後30カ月無再発生存を継続している.大腸MANECの2年以上の無再発生存例はまれであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 公文 剣斗, 木村 圭佑, 村田 年弘, 宇田 征史, 小野田 正
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1332-1335
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.仕事中,同僚の悪戯で清掃用のエアーガンにより肛門に圧搾空気を注入され,その後意識障害を起こし救急要請となった.救急隊到着時,意識レベルはJCS III-300,来院後に気管挿管し人工呼吸を開始した.腹部膨満著明であり,CT検査で大量の腹腔内遊離ガス像を認め,腹腔内臓器は中心に偏移し,下大静脈の虚脱を認めた.下部消化管穿孔による緊張性気腹と診断し緊急手術を行った.開腹時,皮下脂肪織は白色調であり潅流障害が疑われた.開腹と同時に多量のガスが排泄され,著明な腹部膨満,皮下脂肪の色調は改善した.S状結腸に約5cmの長軸方向に裂創を伴う穿孔,便塊の腹腔内への漏出を認め,穿孔部を含むS状結腸部分切除および人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好で術後18日目に退院した.圧搾空気により消化管穿孔をきたし緊張性気腹を発症した稀な症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 大越 香江, 水本 雅己, 木下 浩一
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1336-1342
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    同時多発性脾転移を認めた脾弯曲部結腸癌の1例を経験した.症例は74歳の男性で,脾弯曲部結腸癌による閉塞症状により来院した.来院時のCTにて脾弯曲部結腸の壁肥厚と多発脾腫瘍を認めた.脾弯曲部結腸癌および多発性脾転移と診断されたが,肝や肺に転移を認めなかった.膀胱癌による膀胱全摘後で開腹歴のあること,腫瘍による脾腫大があるために開腹で左半結腸切除術および脾摘出術を行った.病理学的に脾腫瘍は腺癌であり,結腸癌の転移に矛盾しない所見であった.著明な静脈侵襲を認めており,血行性転移の可能性が高いと考えられた.術後経過良好であり,特に合併症なく術後19日目に軽快退院となった.術後補助化学療法としてS-1+oxaliplatinを8クール完遂し,術後12カ月再発なく経過中である.大腸癌の脾転移は稀であるが,切除可能であれば積極的に切除するのが良いと考える.
  • 河野 恵美子, 山崎 芳郎, 安政 啓吾, 春日井 務
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1343-1347
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    62歳,女性.検診で便潜血陽性を指摘され,当科に紹介となった.大腸内視鏡検査にて下部直腸に10mm大のI sp型腫瘍を認め,内視鏡的粘膜切除術を施行した.tub1,T1b(2,000μm),ly0,v1,budding grade1,HM0(250μm),VM0(500μm)であり,腹腔鏡補助下低位前方切除術+D2郭清術を施行した.病理組織学的に腫瘍の遺残は認めず,総合所見はT1b,N0,M0,Stage Iであった.術後6カ月のCT検査で両側第9肋骨に腫瘤を指摘され,FDG-PET検査を施行したところ,異常集積(SUVmax7.8)を認めた.CTガイド下生検を施行したところ高分化管状腺癌であり,直腸癌の転移と診断した.早期直腸癌術後で肝臓や肺転移を伴わない骨転移は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 鳴坂 徹, 木村 圭吾, 宇根 悠太, 小林 正彦, 國土 泰孝, 村岡 篤
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1348-1352
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.2日前より続く陰嚢部の腫脹,発赤,左下腹部痛を主訴に当院へ救急搬送された.受診時,左臀部が一部自壊し悪臭を伴っており,CTでは左陰嚢周囲を中心に臀部,鼠径部にガス像を認めたため,Fournier壊疽と診断し同日緊急デブリドマン,横行結腸双孔式人工肛門造設を施行した.第5病日に抜管し,創内持続陰圧洗浄療法を開始した.開始後炎症反応は徐々に改善し,第8病日に持続洗浄は中止したが,以後も陰圧閉鎖療法を継続し第64病日に軽快退院となった.陰圧閉鎖療法は褥瘡や閉鎖困難な開放創等に対して有用であるが基本的に感染創に使用できないとされている.しかし,陰圧閉鎖療法に持続洗浄を併用した創内持続陰圧洗浄療法を行うことで本症のような感染創に対しても早期に陰圧閉鎖療法が導入でき良好な経過を得たため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 中村 広太, 池田 直也, 金村 哲宏, 上野 正闘, 榎本 浩士
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1353-1358
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.潰瘍性大腸炎に対して当院内科通院中に黄疸を指摘された.前年施行のCT検査では正常胆嚢と15mm径の胆嚢結石が撮影されていたが,来院時腹部造影CT検査では胆嚢は萎縮し,肝内胆管の拡張と左右肝管合流部に狭窄を認め,胆嚢結石により総肝管が圧迫されていた.Mirizzi症候群と診断し,術前にERBDで減黄を施行した後に,手術予定となった.手術所見では,炎症のため高度に萎縮し肝床部に埋没する胆嚢を認めた.胆嚢壁を切開し,胆嚢結石を同定しこれを除去した.径2mmの胆嚢胆管瘻が存在し,瘻孔を閉鎖する目的で胆嚢内腔に肝円索を充填,瘻孔を被覆した.手術後は合併症なく経過し,退院となった.術後DIC-CT検査で修復部胆管の通過に問題がないことを確認した.今回,胆嚢胆管瘻を伴うMirizzi症候群に対して結石除去後に肝円索で瘻孔被覆を行い治療しえた1例を経験したので報告する.
  • 前田 浩晶, 能勢 勝義, 森 啓太郎, 高野 義章
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1359-1363
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.上腹部痛を主訴に近医を受診.腹部CT検査にて肝円索の腫大を認め,精査加療目的に当院紹介入院となった.肝鎌状間膜膿瘍が疑われたが,急性腎不全および高度心機能障害を合併していたため,まずは抗生剤投与による保存的治療が開始された.しかし炎症は軽快せず,肝鎌状間膜の外科的切除を行い速やかに炎症は軽快した.肝鎌状間膜膿瘍は本邦では本症例も含め8例の報告がある,比較的稀な疾患である.抗生剤投与や経皮的ドレナージなども治療法の選択枝として挙げられるが,外科的切除が安全で確実な治療法であると考えられた.
  • 的野 る美, 倉光 正太郎, 梅田 健二, 田原 光一郎, 穴井 秀明
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1364-1367
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    今回,治療に難渋した肝膿瘍の1切除例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.数十年前に交通外傷で肝破裂での開腹歴と半年前に胆石での開腹胆嚢摘出術の既往あり.発熱を主訴に紹介され,CTで肝S8に6cm大と3.5cm大の内部不均一な低吸収域を認め,肝膿瘍と診断された.抗菌薬等で加療するも改善なく,治療抵抗性であると判断し,入院35日目に肝右葉切除術を施行した.これにより解熱し,経過良好にて術後22日目に退院となった.外科的切除が効果的な症例であった.
  • 富林 敦司, 沖津 宏, 森 理, 蔵本 俊輔, 藤原 聡史, 湯浅 康弘
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1368-1374
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.胸部不快感を訴え受診し,冠動脈CTにて偶然に肝腫瘍を指摘された.肝外側区域に約2cm大の腫瘍を認め,増大傾向を示したため,肝細胞癌を否定できず,手術の方針とし,腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した.病理組織学的検査所見では,α-SMA・HMB-45陽性で肝血管筋脂肪腫と診断された.肝血管筋脂肪腫は比較的稀な良性腫瘍であり,術前診断に難渋した症例が数多く報告されている.悪性腫瘍に対して生検を行った場合の,出血や播種の可能性を考慮すると,診断と治療を兼ねた腹腔鏡下肝切除術は有用と思われたので報告する.
  • 大久保 悟志, 後藤田 直人, 高橋 大五郎, 中山 雄介, 杉本 元一, 高橋 進一郎
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1375-1380
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で,健診で肝腫瘤を指摘され当科を紹介受診した.9年前に当科で膵腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術を施行され,solid-pseudopapillary neoplasm (SPN)と診断されており,5年間の経過観察では明らかな再発は認められなかった.腹部造影CTで肝S4/8ドーム下に50mm大の腫瘤を認めた.Cancer boardで討議の結果,SPNの肝転移再発と診断し,腹腔鏡下肝部分切除を施行した.前回手術創の直下に癒着を認めたが,腹腔鏡手術の特性を生かし癒着剥離は最小限度に留めた.肝離断においても拡大視効果により慎重にグリソン枝を結紮・切離し,胆汁漏出などなく切除しえた.病理組織学的検査でSPN肝転移の診断となった.明らかな合併症はなく術後第7病日に軽快退院され,現在術後1年を経過し無再発生存中である.
  • 須藤 亜希子, 木村 憲央, 矢越 雄太, 石戸 圭之輔, 工藤 大輔, 袴田 健一, 吉澤 忠司, 鬼島 宏
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1381-1388
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.2001年に左肩部腫瘍摘出術の既往があった.2012年の腹部CTにて,肝左葉外側区域と左腎に早期濃染とwash outを示す腫瘍を認めた.胆管嚢胞腺癌および左腎細胞癌の重複癌の診断で,肝左葉切除術,左腎部分切除術,胆嚢摘出術を施行した.病理組織学的検査にて,肝・腎ともにHemangiopericytoma (HPC)と診断された.原発巣検索目的に2001年に左肩部腫瘍手術時の病理所見を確認したところ,肝・腎腫瘍と類似した所見を呈するHPCであった.臨床経過や病理所見を総合し,左肩部皮下原発HPCの肝・腎転移と診断した.2013年WHO分類にてHPCはsolitary fibrous tumor(SFT)へ統合されたが,軟部組織原発SFTの肝腎転移の報告はまれである.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 大渕 佳祐, 武田 圭佐, 村田 竜平, 財津 雅昭, 今 裕史, 小池 雅彦
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1389-1394
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    小児の胆嚢捻転症は稀だが,胆嚢動脈の虚血や胆嚢壊死をきたし,時に致命的となる.自験例は360°捻転して自然解除不能なCarter分類の完全型であったが,症状発現が緩徐で診断に難渋し,発症3日目に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.症例は11歳,女児.前日からの右季肋部痛と嘔吐を主訴に,当院小児科に紹介入院となった.身体所見では心窩部から右季肋部に自発痛と圧痛があり,採血では炎症反応が軽度増加していた.入院翌日のCTで胆嚢腫大および壁の造影効果を認めた.入院2日目に右季肋部に約3cmの有痛性腫瘤を触知し,MRCPでは胆嚢腫大と胆嚢管の途絶を認めた.同日,胆嚢捻転症の疑いで緊急手術を施行した.反時計周りに360°捻転した完全型胆嚢捻転症であり,胆嚢は全体的に黒く変色していた.また,胆嚢管のみが肝臓と付着するGross II型の遊走胆嚢であった.捻転を解除して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後経過は良好で術後4日目に退院した.
  • 遠藤 史隆, 須藤 隆之, 小鹿 雅博, 石田 馨, 新田 浩幸, 佐々木 章
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1395-1399
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.膵頭部癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.13病日に胆汁漏を認め,抗生剤,腹腔ドレナージによる治療を開始した.胆汁漏は改善したが,28病日に下血を認めた.精査のため下部消化管内視鏡検査を施行したが明らかな出血源を認めず,vital signも安定していたため保存的に経過観察を行った.33病日に再度下血を認め,血管造影検査を施行した.胆嚢動脈仮性動脈瘤から胆管空腸吻合部付近の再建空腸内に造影剤の血管外漏出を認めた.胆嚢動脈仮性動脈瘤の空腸内穿破と診断し,右肝動脈をコイルで塞栓して止血した.その後の経過は良好で,50病日に退院した.術後に腹腔内膿瘍が生じた場合には,仮性動脈瘤の形成・破裂という重篤な合併症が起こりうる.腹腔内出血だけでなく,消化管内に出血する可能性を念頭に置いて血管造影を行い,早期診断・治療につなげることが重要であると考えられた.
  • 寺崎 史浩, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高山 祐一, 深見 保之, 尾上 俊介
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1400-1404
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で,既往に大動脈弁狭窄症・僧房弁狭窄症があり,平成18年に弁置換術を施行され,術後からアスピリンとワーファリンカリウムを内服していた.平成27年3月に左上腹部痛を主訴に当院救急外来を受診し,腹部造影CT検査で脾梗塞を認めたため,保存的治療の方針で入院となった.入院後10日目の腹部造影CT検査で26×24mmの脾動脈瘤の出現を認めたため,入院後12日目に血管造影検査,コイル塞栓術を施行した.入院後22日目に再度の腹部造影CT検査を施行し,新たな動脈瘤の出現を認めず退院した.入院時血液検査所見でループスアンチコアグラント陽性であり,流産歴も有ることから抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たしており,抗リン脂質抗体症候群に伴う脾梗塞発症とそれに関連した脾動脈瘤の形成であると診断した.
  • 小西 小百合, 間中 大, 西躰 隆太, 濱洲 晋哉, 神頭 聡, 安 英男
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1405-1409
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    膵尾脾門部の脾動脈瘤に対しては,従来膵尾部脾臓合併切除を行うのが一般的だが,今回,腹腔鏡下胃切除術における脾門部リンパ節郭清の手術手技を応用し脾動静脈の細かな分枝を選択的に露出し処理することで,膵尾部と脾臓を温存しながら動脈瘤単独の結紮術を施行することができた症例を経験したので報告する.
    症例は73歳の女性.腹部造影CTにて脾門部付近の脾動脈本管よりさらに末梢側,上極枝の一次分枝に約2.0cmの動脈瘤を認め,腹腔鏡下に動脈瘤の流入流出血管のみを体内結紮法にて結紮した.術後6カ月目のCTにて動脈瘤の再発は認めず,また脾臓の血流障害も認めていない.
  • 本田 晴康, 林 誠一, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1410-1414
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.8年前に前立腺癌と診断され,内分泌療法中.左鎖骨上腫瘤を主訴に当科を初診.吸引細胞診で前立腺癌転移の疑いとされた.また,ピロリ感染胃炎にて除菌療法後に施行された胃内視鏡検査で,前年にはなかった胃静脈瘤を指摘された.血小板数は7.4万/μlと低下していた.腹部CT検査で脾門部に4cm大の腫瘤を認めた.脾門部腫瘍による局所性門脈圧亢進症と診断し,膵体尾部・脾切除を施行した.切除標本所見で脾門部に25mm大の灰白色,弾性硬の腫瘍が見られた.組織学的にはPSA染色陽性で,前立腺癌の転移と診断された.腫瘍は膵および脾実質内に微小浸潤を認め,脾静脈内腫瘍塞栓を認めた.術後,血小板数は正常化し,胃内視鏡所見でも静脈瘤は消失した.転移性腫瘍が脾門部に生じた症例の報告は少なく,局所性門脈圧亢進症を呈したのは自験例のみであった.
  • 宮地 洋介, 村上 隆啓, 伊江 将史, 砂川 一哉, 上田 真, 福里 吉充
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1415-1420
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性.急性発症の右側腹部痛を主訴に当院を受診し,腹部CTにて右副腎腫瘍破裂が指摘された.内分泌学的精査ではコルチゾール産生腫瘍が疑われ,入院13日目に開腹での右副腎摘出術が施行された.術後病理検査で副腎皮質癌が診断された.この時点で明らかな転移巣は認められず,術後補助療法として経口ミトタン内服と腫瘍床への放射線外照射を行った.術後24カ月が経過して転移・再発を認めない.副腎皮質癌の自然破裂は稀であり,完全切除後も転移・再発の危険性が高いと考えられ,術後早期の集学的治療を追加することが望まれる.本症の経過に文献的考察を加えて報告する.
  • 遠藤 豪一, 郡司 崇志, 今野 修
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1421-1426
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,男性.数年前より右鼠径部膨隆あるも放置していた.膨隆が著明となり近医受診,巨大な鼠径ヘルニアを疑われ当院紹介となった.来院時陰嚢部は25cmと著明に腫脹,CT検査では回腸から横行結腸までの右半結腸が脱出する巨大な鼠径ヘルニアと診断,非還納性であったが嵌頓症状は認めなかったため待機的に手術を施行した.手術は鼠径法にて施行した.ヘルニア内容を確認すると回腸から横行結腸までの右半結腸が脱出,大網も脱出していた.大網は肥厚が著明で腹腔内への還納は不可能と判断,脱出大網を切離し,予防的虫垂切除術施行後,脱出腸管を腹腔内に還納,鼠径管はiliopubic tract repair法に準じて補強した.術後経過は良好で,術後6日目退院となった.文献的考察を加え報告する.
  • 田中 香織, 天岡 望, 西科 琢雄
    2017 年 78 巻 6 号 p. 1427-1430
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/30
    ジャーナル フリー
    毛巣洞に対する根治術としては洞の完全切除が必要であるが,単純切除縫合では再発も多く,創離開することも少なくない.これに対して今まで様々な形成術が報告されているが,今回われわれはW形成術を採用し良好な結果を得た症例を経験したので報告する.症例は22歳の男性.数年前からの仙骨部の腫瘤,排膿,出血を主訴に当院を受診した.仙骨部に2箇所の開口部を有する約7cmの瘻孔を確認した.毛巣洞と診断し全身麻酔下で手術を施行した.皮膚切開は瘻孔部を囲む稲妻型とした.瘻孔を完全に切除後,皮弁形成のために左右の大臀筋筋膜上で十分に皮下脂肪層を剥離授動した.皮膚縫合は緊張なく施行可能で,術後8日目に退院した.W形成術は切除後の縫合に無理をきたすことなく,また毛巣洞の成因である臀裂の回転運動による瘻孔の内部への入り込みを防ぎ,発生原因を根本的に取り除く方法として,合理的な術式であると考えられる.
編集後記
feedback
Top