抄録
腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後に見られるtypeIIエンドリークのような腰動脈からの出血による合併症は,腹部大動脈瘤人工血管置換術後には稀である.われわれの経験した症例は破裂性腹部大動脈瘤で人工血管置換術施行されていた84歳の男性である.術後9年目に撮影したCTでは,左内腸骨動脈瘤以外は人工血管置換部付近の異常は指摘されていなかった.術後9年2カ月後突然の左側腹痛を主訴に救急外来受診した.左内腸骨動脈瘤の破裂を疑い造影CT施行したところ,置換した人工血管をラッピングした瘤壁内に流入する腰動脈よりの出血が原因の後腹膜出血と診断された.出血の原因となっている腰動脈と内腸骨動脈瘤をコイル塞栓し,人工血管左脚から外腸骨動脈にステントグラフトの脚を留置し救命したので,文献的考察を加え報告する.