抄録
症例は43歳の男性で,バス停で突然倒れ心肺停止状態であったため,bystanderによる心肺蘇生が行われた.急性冠症候群による心肺停止を疑い,緊急冠動脈造影を施行したところ,左冠動脈前下行枝に90%狭窄を認め経皮的冠動脈形成術を行った.ICUへ帰室後,抗血栓療法を開始したところ,18時間後より血圧低下および貧血の進行を認めた.CTで大量腹腔内出血を伴うIIIb型肝損傷を認めたが,腹部血管造影では出血血管を同定できなかったため,抗血栓療法を中止し輸血による保存的治療を行った.その後,循環動態は安定し,経過良好で20日後に退院した.3カ月の経過で,肝内の複数の血腫は限局,縮小化している.肝損傷の原因は胸骨圧迫と考えられ,抗血栓療法は肝損傷による腹腔内出血の増悪因子で,心肺蘇生の行われた患者では注意が必要である.