2018 年 79 巻 1 号 p. 25-30
目的:残膵癌における膵胃吻合再建の利点と残膵全摘出術の意義を検討する.方法:1998年1月から2016年3月まで,浸潤性膵管癌(PDA)および膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)切除後の残膵癌に対して残膵全摘出術を施行した患者(各3例)を対象に,再発の診断方法・手術の安全性・予後を検討した.結果:初回手術は膵頭十二指腸切除+膵胃吻合再建5例,膵体尾脾切除1例であった.膵胃吻合再建例は全例,内視鏡下観察および生検で再発の診断が可能であった.手術時間は192分,出血量は1,250mlであった.重篤な周術期合併症はなかった.予後は,PDAでは1名が17カ月無再発生存中,もう1名は47カ月再発生存中,残り1名は9カ月で原病死した.一方,IPMCでは1名が133カ月無再発生存中,他2名はそれぞれ44,49カ月で原病死した.結語:膵胃吻合再建は吻合部の観察や生検を行うことが可能であり,残膵全摘出術は安全で有用の可能性がある.