抄録
症例は66歳,女性.数日前からの右下腹部痛を主訴に近医から紹介となった.バイタルサインは安定しており,右下腹部に圧痛を認めた.血液検査で炎症反応は上昇し,造影CT検査で上行結腸の壁は肥厚し,肝表面からDouglas窩にかけて腹水を認めた.盲腸腫瘍後腹膜穿通を疑い,抗生剤による治療を開始した.翌日,血圧低下と意識障害が出現した.輸液で血圧は上昇したが,来院時の血液培養検査からClostridium perfringensが検出された.急性期DICスコアは5点であり,盲腸腫瘍後腹膜穿通による敗血症と診断し,回盲部切除術,腹腔洗浄ドレナージ術を行った.術後,ICUで集中治療を開始したが,術後2日目に循環不全で死亡した.腫瘍はpStage IIの盲腸癌であった.Clostridium perfringens感染症について,特徴や救命できなかった原因を中心に,文献的考察を踏まえて報告する.