抄録
本邦初となるチフス菌(Salmonella enterica serovar typhi;S. Typhi)による乳腺膿瘍の1例を報告する.腸チフスは本邦では年間20-70例が発症し,大半がアジアもしくはアフリカへの渡航歴がある.0.5%に乳腺膿瘍を合併するといわれ非常に稀である.症例は28歳,健常女性.右乳房腫瘤,疼痛を主訴に受診した.造影CT・US検査で明らかな膿瘍形成は認めず,乳腺炎と診断した.インドから帰国後1カ月間発熱と解熱を繰り返していたが,皮疹や消化器症状は受診時は認めなかった.第三世代セフェム1週間投与にて症状は軽快したが,硬結が残存していたため穿刺したところ,膿汁が得られた.培養でS. Typhiが分離された.CVA/AMPC 2週間投与で乳房硬結も改善した.ファージ型はUVS2,ナジリクス酸およびシプロフロキサシン耐性株であった.