日本臨床外科学会雑誌
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症例
交通外傷後遅発性に発症し救命した外傷性腸間膜仮性動脈瘤破裂の1例
小山 正三朗田中 賢治土屋 りみ久野 博
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2018 年 79 巻 1 号 p. 60-65

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抄録

症例は38歳,男性.自動車運転中に誤って路上のポールに衝突した.事故直後は症状がなかったが夕方より腹痛が増悪したため,同日夜に当院救急外来を受診した. 来院時CTで,外傷性S状結腸腸間膜損傷の診断で当科入院となった.保存的加療にて一時改善傾向であったが,入院17日目深夜に突然大量下血し,ショックバイタルに至った.CTで,S状結腸腸間膜仮性動脈瘤破裂の診断で即日緊急手術となった.術中所見で下腸間膜動脈分枝に仮性動脈瘤形成と破裂を認め,またS状結腸背側に穿孔部位を認めた.瘤を結紮止血後,Hartmann手術を施行した.臨床所見と併せると,腸間膜仮性動脈瘤破裂の出血が穿孔部を通って腸管内に流入し下血をきたしたと考える.術後は重篤な合併症なく,第33病日に自宅退院となった.遅発性外傷性腸間膜仮性動脈瘤は非常に稀で,腹部鈍的外傷で保存的に経過をみる際は,遅発性合併症について十分に念頭に置いて診療に臨むべきと考える.

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