日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前診断し待機的に腹腔鏡手術を行ったS状結腸間膜窩ヘルニアの1例
能美 昌子藪田 愛前田 裕子田口 朋洋朝戸 裕二井戸 弘毅
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2018 年 79 巻 10 号 p. 2114-2119

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抄録

腹部手術歴のない58歳,女性.下腹部痛,嘔吐が持続するため当院を受診した.腹部造影CTで左下腹部にclosed loopを形成した小腸を認め,内ヘルニアが疑われた.Loopは距離が短く,S状結腸間膜の背側,左総腸骨動脈の腹側にあることから,S状結腸間膜に関連した内ヘルニア,中でもS状結腸間膜窩ヘルニアを強く疑った.CTで腸管壊死の所見はなく,嵌頓腸管が壊死した過去の報告も少なかったことから,イレウス管で減圧後,待機的に腹腔鏡手術を施行した.小腸を牽引して嵌頓を解除し,直径約2cmのヘルニア門を縫合閉鎖した.また,その近傍に同じ形状の約1cmの孔を認めた.ヘルニアの内腔は下行結腸間膜と壁側腹膜の間隙であり,S状結腸間膜窩ヘルニアと診断した.
S状結腸間膜窩ヘルニアは腸管壊死をきたしにくく,嵌頓小腸も短いため,減圧後の待機的腹腔鏡手術の良い適応であると思われた.

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