日本臨床外科学会雑誌
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症例
多発性骨髄腫を重複し骨転移と鑑別を要した肺癌の1例
熊田 高志渡 正伸伊藤 林太郎
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2018 年 79 巻 11 号 p. 2240-2245

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抄録

症例は62歳,男性.外傷性くも膜下出血で加療中,CT検査で左肺上葉S1+2に1.8cmの結節影を指摘され,同時に複数の骨融解病変を認めた.FDG-PET検査では肺結節影に一致してSUVmax:3.0の集積を認めるほか,骨病変に軽度集積を認めた.骨病変が肺癌の骨転移でなければ根治術の適応と考え,全身麻酔下に生検術を行う方針とした.初めに腹臥位で腸骨病変の生検を行い,迅速病理検査で骨髄腫の診断が得られた.続いて,右側臥位で分離肺換気とし,肺病変の生検を行ったところ,腺癌と診断された.I A期の肺癌と判断し,左上葉切除とリンパ節郭清を施行した.多発性骨髄腫に対しては,術後に血液内科へ紹介し化学療法が行われた.多発性骨病変を認めたが,安易に骨転移と断定せずに積極的に生検を行い,肺癌に対する根治術が施行できた.多発性骨髄腫を合併した肺癌は比較的稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.

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