日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前診断が困難であった小児(14歳)腹部放線菌症の1例
石岡 秀基八重樫 瑞典高橋 正統皆川 幸洋遠野 千尋吉田 徹
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2018 年 79 巻 11 号 p. 2281-2285

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抄録

症例は14歳,男児.5日前からの腹痛を主訴に近医を受診した.急性虫垂炎が疑われ,当院へ紹介となった.体温38.3℃,右下腹部に圧痛および反跳痛を認めた.血液検査で白血球およびCRPの上昇,造影CTで回盲部に膿瘍を認め,周囲の脂肪織濃度上昇を認めた.穿孔性虫垂炎に伴う腹腔内膿瘍の疑いで,緊急手術を行った.腹腔鏡下に開始したが,骨盤内で肥厚した大網と腸管が一塊となっており鉗子の操作空間がなく,開腹へ移行した.回盲部で大網と回腸が強固に癒着しており,同部位に8cm大,4cm大の腫瘤を2個認めたことから,炎症の主座と判断して,回腸部分切除,虫垂切除を行った.摘出標本の膿瘍内に放線菌の集塊を認め,腹部放線菌症の診断に至った.術後一過性のβ-D-グルカン高値を認めたが,原因は不明であった.術後1年が経過したが,再発はみられていない.

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© 2018 日本臨床外科学会
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