日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵管出血にて発症した退形成性膵管癌の1例
小原 史衣小山田 尚西村 隆一藤原 翔阿部 啓二石田 和之菅井 有
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2018 年 79 巻 11 号 p. 2350-2354

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抄録

80歳,男性.入院2カ月前から易疲労感,黒色便があり,近医で重度の貧血を認め当院に紹介された.入院時,血液検査はHb 3.5g/dl,AMY 573IU/L,CEA 2.0ng/ml,CA19-9 22.2U/mlだった.上部消化管内視鏡で十二指腸乳頭から血液流出を認めた.CTで主膵管拡張,MRCPで膵管胆管合流部付近の主膵管狭窄が疑われた.各種検査より,何らかの膵病変からの出血,凝血による膵液流出障害を疑った.貧血が増悪し,入院12日目に緊急手術をした.膵臓を門脈直上で切離すると,尾側から膵管出血があり,切離面より3cm尾側に胆道鏡で出血を確認した.追加切除し,摘出標本に膵管内に腫瘤があり出血源と考えた.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断は,膵管内に限局した退形成性膵管癌(0.5×0.5cm,pT1N0M0,Stage I)となった.膵管出血は膵腫瘍では稀であり,報告する.

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© 2018 日本臨床外科学会
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