日本臨床外科学会雑誌
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症例
両側乳房全摘術創のMSSA感染によるtoxic shock syndromeの1例
松本 玲郷地 英二斉藤 徹永井 啓之横山 元昭野澤 聡志
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2018 年 79 巻 2 号 p. 289-293

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抄録

症例は70歳,女性.両側乳癌に対して当科で両側乳房全摘術を施行し,術後10日目に発熱と嘔吐,下痢を認めた.翌日には上半身に紅斑が出現し,ショック,DIC,急性腎不全の状態となった.明らかな創部の感染徴候は認めなかったが創部を開放した.培養からグラム陽性球菌が検出されたため,ダプトマイシンの投与を開始.バイタルも安定していった.第6病日に両側創部のデブリードマン術を施行した.明らかな膿瘍形成は認めなかったが,大胸筋前面に白苔や壊死組織を認めた.創部には持続陰圧閉鎖療法を用いた.術後経過は良好で,約1カ月後に退院した.創部培養からTSST抗原陽性のMSSAが検出されtoxic shock syndrome(TSS)と診断した.創部の表面上の感染徴候は認めなかったにも関わらず,典型的なTSSの臨床像を呈した症例を経験した.創部の感染を疑い,積極的な外科的ドレナージ術を施行し,救命することができた.

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