抄録
症例は63歳,女性.夕食後に嘔吐し,直後に胸背部痛があり当院へ救急搬送となった.胸部CT検査にて胸水を伴った左気胸および大動脈周囲の縦隔気腫,食道造影にて造影剤の胸腔内への流出を認めたため,特発性食道破裂と診断した.手術適応であったが,宗教上の理由で輸血の可能性がある手術を拒否されたため,絶飲食として抗生剤を投与し,減圧用ルーメン付き成分栄養チューブと胸腔鏡下に2本の胸腔ドレーンを挿入した.全身状態は不安定であったが胸腔内洗浄と経管栄養を行い,第48病日の食道造影にて造影剤の漏出は消失し,経口摂取を開始,第81病日に退院となった.胸腔穿破を伴う特発性食道破裂は死亡率が高く原則緊急手術を必要とするが,適切な胸腔ドレナージおよび減圧用ルーメン付き成分栄養チューブを用いた経腸栄養による治療の選択肢もあると思われた.