抄録
症例は81歳,男性.激しい腹痛を主訴に来院した.腹部CTで総胆管結石と左横隔膜下に液体貯留を認めたため,急性腹膜炎の診断で同日臨時手術を施行された.腹腔内には大量の胆汁と腹水が貯留しており,肝外側区域に小孔と胆汁漏出を認めた.肝内胆管破裂と診断し,肝外側区域部分切除と胆嚢摘出術と総胆管切開結石切石術を施行し,総胆管にT-tubeを留置した.術後経過良好で術後第25病日に退院となった.胆汁性腹膜炎の原因である胆道穿孔の中でも特発性のものは稀であり,さらに肝内胆管破裂によるものはほとんど報告例がない.しかし,胆汁性腹膜炎を疑う急性腹症の鑑別診断の一つとして考慮する必要があると考える.