抄録
症例は83歳の女性で,呼吸苦と胸腹部痛を主訴に救急車で来院された.理学所見,血液生化学検査,腹部CT,MRIより当初胆嚢癌に伴う出血を疑った.出血は自然止血し,高齢で認知症であることを考え,経過観察の方針とした.
その後も胸腹部痛,黒色便を繰り返したため再度腹部CTを行うと,胆道出血を疑う所見と胆嚢壁に動脈瘤を認めた.胆嚢出血は動脈瘤によるものと判断した.胆嚢動脈瘤に対して動脈塞栓術を行った上で,腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.病理組織学的には胆嚢は黄色肉芽腫性胆嚢炎で,胆嚢動脈瘤は仮性動脈瘤と診断された.
今回,胆嚢動脈瘤に対して動脈塞栓術を先行して行うことで,腹腔鏡下胆嚢摘出術を安全に行うことができた.