2018 年 79 巻 2 号 p. 412-417
症例は74歳,女性.膵癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.組織診断はinvasive ductal carcinomaであった.術後1年6カ月の定期検査にてCA19-9の上昇を認めた.腹部造影CTにて膵体部に約30mm大の低吸収腫瘤を認め,残膵癌の診断で残膵切除術を実施した.術後組織診断はadenosquamous carcinoma, pT4N1M0 pStage IIIであり,(1)初発癌と残膵癌の組織診断が異なる,(2)膵断端が陰性である2点より,異時性膵癌と判断した.残膵癌組織型がadenosquamous carcinomaの症例は本邦2例目の報告となる.浸潤性膵管癌の予後は不良とされるが,近年は異時性膵癌に対する残膵切除の報告が認められる.膵癌術後の経過では,再発以外に異時性膵癌の可能性も念頭に置くことは非常に重要となる.