日本臨床外科学会雑誌
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症例
術後管理に難渋した巨大鼠径ヘルニアの1例
半澤 俊哉浜野 郁美松本 祐介甲斐 恭平佐藤 四三
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2018 年 79 巻 2 号 p. 441-445

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抄録

症例は63歳,男性.6年前から左鼠径部膨隆を放置し,ヘルニア増大による排尿困難にて受診した.来院時身体所見では,左ヘルニア嚢の膨隆は立位で膝に達し,用手還納は困難であった.CTでは小腸および上行結腸,下行からS状結腸の脱出を認めた.腹腔鏡アプローチで手術を開始したが,嵌入腸管とヘルニア嚢との癒着により還納困難で前方アプローチへ移行した.還納後,気腹下に腹腔内を観察し,腸管の血流障害がないことを確認し手術終了した.術後は腹部コンパートメント症候群(Abdomen Compartment Syndrome,以下ACS)を考慮し,気管挿管のままICU管理を行った.ACSによる呼吸循環不全のため4日間の人工呼吸器管理を要し,抜管後も非侵襲的陽圧換気を離脱できなかった.術後11日目にICUを退室し24日目に退院した.腹腔鏡併用でも回避し得なかった巨大鼠径ヘルニア術後のACSを経験し,術式や周術期管理について周到な計画を要すると考えた.

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