2018 年 79 巻 3 号 p. 516-522
症例は68歳,女性.関節リウマチに対し9年間メトトレキサート(以下,MTX)を内服中であった.倦怠感を主訴に受診し,血液検査および腹部造影CTで終末回腸の悪性リンパ腫が疑われた.MTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)の可能性を考えMTXを中止した.2週間後の下部消化管内視鏡検査では悪性リンパ腫が疑われたが,確定診断には至らなかった.診断および治療目的に腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.組織学的にはリンパ増殖症の診断で,MTX内服の既往と合わせてMTX-LPDと考えられた.小腸に発症したMTX-LPDの報告は自験例を含め7例あるが,自験例を除くすべての症例で穿孔により緊急手術が行われている.また,待機的に腹腔鏡手術を行った文献報告は認めない.今回われわれは,終末回腸に発症したMTX-LPDを術前に疑い,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.