抄録
患者は64歳,男性.2009年5月にアルコール性非代償性肝硬変に対し,生体部分肝移植術を施行した.Epstein-Barr virus(EBV)はともに既感染であった.術後の免疫抑制剤は3剤併用療法を行い,ステロイドは術後6カ月目に中止した.2014年1月に吐下血を認め,上部消化管内視鏡にて胃体上部に潰瘍を伴う腫瘍性病変を認め,生検により移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)と診断された.EBV-PCR検査は陰性であった.PET-CT検査では胃および腹腔内の塊状に腫大したリンパ節にFDGの集積を認め,Ann Arbor分類II期と診断した.治療として,まず免疫抑制剤を減量した.続いて化学療法を施行しCRとなった.小児ではほとんどがEBV関連のPTLDであるが,成人ではその割合は約70%と報告されており,成人肝移植症例ではEBV非関連のPTLDが発症する危険性に注意する必要がある.