抄録
症例は80歳の女性で,肛門出血で当院を受診した.精査にて肛門管癌(cT4(膣浸潤疑い)N0M0 cStage IIIA)と幽門前庭部胃癌(cT1N0M0 cStage IA)と診断され,骨盤部への放射線照射とS-1内服による化学放射線治療後に腹腔鏡補助下直腸切断術・D2郭清と幽門側胃切除・D2郭清・B-I再建を実施した.術後病理は,肛門管癌はpCRであり,胃癌はypStage IAであった.術後補助治療なく経過観察となった.術後左乳房B領域に腫瘤形成性病変を認め,組織診で原発性乳癌(充実腺管癌)と診断し,左乳房切除術+腋窩リンパ節郭清(児玉法)を実施した.術後病理で既存の胃癌の組織像と一定の共通性もあり,胃癌の転移の可能性も否定できないとの結果であった.免疫染色でHNF4aが陽性であり,胃癌の乳腺転移と診断した.今までに胃癌の乳腺転移にHNF4aを用いた症例の報告は無く,非常に稀と思われた.