日本臨床外科学会雑誌
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症例
血液凝固第XIII因子製剤投与が有効であった胃切除術後難治性乳糜腹水の1例
砂川 祐輝鹿野 敏雄寺本 仁丸山 浩高蜂須賀 丈博
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2018 年 79 巻 7 号 p. 1453-1458

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抄録

症例は67歳,男性.胃前庭部癌に対し幽門側胃切除術を施行した.術後3日目に食事を開始したがドレーン排液が白濁した.絶食で速やかに漿液性となり,ドレーンの白濁以外に腹部症状はなく,無臭性・白色乳状液であることから乳糜腹水と診断した.絶食,中心静脈栄養管理とし,酢酸オクトレオチド酢酸塩の投与を行ったが改善しなかった.血液凝固第XIII因子活性が62%と低値であったため,術後24~28日目に血液凝固第XIII因子製剤を投与した.術後31日目に食事を再開したが,ドレーン排液の白濁化は認めず,その後も腹水増加を疑う所見を認めず,乳糜腹水は改善した.
乳糜腹水は腹部手術後の合併症の一つで,その治療に難渋することがある.乳糜腹水に対し血液凝固第XIII因子製剤を投与した報告は少ない.今回われわれは,血液凝固第XIII因子製剤の投与により改善した胃癌術後の乳糜腹水の1例を経験したため報告する.

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