日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔内出血をきたした卵黄血管遺残の1例
多加喜 航永田 啓明岡山 徳成藤原 郁也沢辺 保範鴻巣 寛
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2018 年 79 巻 7 号 p. 1469-1473

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抄録

症例は67歳,男性.就寝中に突然の腹痛を自覚し受診.造影CTで虫垂左側に造影剤の漏出を伴う血腫を認め,腹腔内出血の診断のもと緊急開腹手術を行った.術中所見にて,回腸末端から10cm口側の回腸間膜に索状物を認め,同部より拍動性に出血していたため,これを結紮止血した.腹壁側を観察すると,右内側臍ひだから分枝し腹腔内へ下垂する索状物の断端を認めた.出血源と考えられた回腸間膜の索状物と類似しており,同索状構造内の血管の破綻が腹腔内出血をきたした原因と考えられた.解剖学的観点から,破綻した血管は卵黄血管遺残と考えられた.
過去の報告では,卵黄血管遺残はMeckel憩室を高率に合併するとされるが,本症例では認めなかった.卵黄血管遺残はイレウスを契機に発見されることが多いとされるが,腹腔内出血をきたした症例は未だ報告されていない.今回,われわれは卵黄血管遺残が非外傷性腹腔内出血の原因となった,非常に稀な症例を経験したので報告する.

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