2019 年 80 巻 10 号 p. 1903-1908
症例は66歳,男性.10年前から左鼠径部の膨隆を認めた.徐々に両側性となり,5年前から左右とも非還納性となった.陰嚢サイズはそれぞれ約20×10×10cmで,立位で陰嚢下端が大腿内側中点を越える両側巨大鼠径ヘルニアと診断した.還納容積が大きく,還納後の腹部コンパートメント症候群が懸念されたため,腹腔内圧に近似できる膀胱内圧を測定しつつ周術期管理を行った.全身麻酔導入後,気腹開始前に,両側ともヘルニア還納が可能であったが,膀胱内圧の上昇は認めなかったため,腹腔鏡手術で両側を一期的に修復した.術後の膀胱内圧上昇は軽度で,腹部コンパートメント症候群は認めず,術後7日目に退院した.術後6カ月を経過したが再発はない.今回,膀胱内圧を参照することで,腹部コンパートメント症候群の発症を危惧することなく,腹腔鏡下に一期的に手術しえた両側巨大鼠径ヘルニアの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.