2019 年 80 巻 4 号 p. 641-651
転移性肺腫瘍に対する外科治療は広く行われている一方で,依然としてその適応や術式に関するガイドラインは存在しない.転移性肺腫瘍に対する外科治療について,実臨床に即して議論すべき内容は,①手術適応基準,②手術術式:肺切除範囲 (部分切除か肺葉切除か,それとも区域切除か),肺所属リンパ節郭清の意義,手術アプローチ (胸腔鏡アプローチか開胸アプローチか),③原発巣別の治療方針,③集学的治療の時代における外科治療の役割,に大別されると考えられる.本綜説では,①転移性肺腫瘍の外科治療の歴史から現在の手術適応基準に至る経緯と当院での手術適応基準,②手術術式に関する当院での変遷と現状並びに文献報告との対比,部分切除の手術手技に関する考察,③当院での原発巣別/年代別切除成績の変遷,④集学的治療の時代における外科治療の役割と今後の展望,について当院での経験を基に考察する.