日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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80 巻 , 4 号
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綜説
  • 松浦 陽介, 奥村 栄
    2019 年 80 巻 4 号 p. 641-651
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    転移性肺腫瘍に対する外科治療は広く行われている一方で,依然としてその適応や術式に関するガイドラインは存在しない.転移性肺腫瘍に対する外科治療について,実臨床に即して議論すべき内容は,①手術適応基準,②手術術式:肺切除範囲 (部分切除か肺葉切除か,それとも区域切除か),肺所属リンパ節郭清の意義,手術アプローチ (胸腔鏡アプローチか開胸アプローチか),③原発巣別の治療方針,③集学的治療の時代における外科治療の役割,に大別されると考えられる.本綜説では,①転移性肺腫瘍の外科治療の歴史から現在の手術適応基準に至る経緯と当院での手術適応基準,②手術術式に関する当院での変遷と現状並びに文献報告との対比,部分切除の手術手技に関する考察,③当院での原発巣別/年代別切除成績の変遷,④集学的治療の時代における外科治療の役割と今後の展望,について当院での経験を基に考察する.

臨床経験
  • 稲吉 厚, 村本 一浩, 谷川 富夫, 保坂 征司, 菊竹 高志, 有馬 信之
    2019 年 80 巻 4 号 p. 652-657
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    乳腺管状癌は本邦では1%前後と比較的稀な高分化の浸潤癌で予後良好といわれている.今回,当院でpure typeの乳腺管状癌11例を経験し,それらの造影超音検査を含めた超音波所見および臨床病理学的所見を検討した.マンモグラフィでは11例中8例がC-3以上であった.超音波所見では全例が不整形低エコー腫瘤像として描出され,カラードプラで血流増加を認めた.エラストグラフィでは9例がES-3,4であった.5例に造影超音波検査を施行し,腫瘤はび漫性または不均一に染影され,2例は腫瘤像より広く染影された.臨床病理学的所見では,全例が腫瘤径10mm以下,核グレード1で,脈管侵襲も認めなかったが,リンパ節の微小転移を1例のみ認めた.ERは全例陽性,PgRは10例で陽性,HER2は全例陰性,Ki67は全例20%以下であり,従来の報告通り生物学的に悪性度の低い乳癌と考えられた.

  • 久留宮 康浩, 水野 敬輔, 世古口 英, 菅原 元, 河合 清貴, 桐山 宗泰
    2019 年 80 巻 4 号 p. 658-662
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:名古屋刑務所に服役中で,刑務所より当院に紹介され外科治療を施行した症例について診療上の問題点を明らかにする.対象:症例は過去5年間の67例.平均年齢は56.6歳で,すべて男性であった.良性疾患32例,悪性疾患35例であった.全例,保険診療は行われず,支払能力はなくすべて刑務所負担であった.受刑者の入院加療の決定権は刑務所所長にあり,入院・手術・転院の決定は主治医と刑務所所長の間で決められた.方法:疾患,術前検査,手術,周術期合併症,術後経過について調べた.結果:術前検査においては検査値異常が多く,耐術能の低い患者が多かった.また,悪性疾患では進行度の進んだ症例が多く,ステージ3,4が54%であった.考察:被収容者の処遇に関する法律には受刑者も適切な医療を受ける権利があるとされるが,家族には治療はおろか疾患そのものについても知らされず,真に医療倫理が守られているとはいえなかった.

症例
  • 中山 雄介, 豊田 英治, 松林 潤, 大江 秀明, 廣瀬 哲朗, 土井 隆一郎
    2019 年 80 巻 4 号 p. 663-667
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(mineralocorticoid responsive hyponatremia of the elderly:以下MRHE)は,著明な低ナトリウム血症をきたす疾患である.今回,膵体尾部切除術後に,MRHEを発症した症例を経験したので報告する.症例は70歳,男性.血糖コントロール悪化の精査で膵尾部に腫瘍を指摘され,当院へ紹介された.腹部造影CT検査,EUS-FNA検査で切除可能膵尾部癌と診断.腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.術後15日目に著明な低ナトリウム血症(114mEq/l)を認めた.血清コルチゾールが正常で,脱水所見を認めたことより,MRHEと診断し,鉱質コルチコイド製剤の内服を開始した.術後24日目には,血清ナトリウム値が138mEq/lまで改善し退院した.その後,血清ナトリウム値は正常範囲で推移し,退院3カ月後には鉱質コルチコイド製剤は終了した.

  • 扇原 香澄, 塩澤 幹雄, 秋根 大, 富永 経一郎, 佐田 尚宏
    2019 年 80 巻 4 号 p. 668-674
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は83歳,女性.糖尿病,徐脈頻脈症候群に対してペースメーカー埋込術後,ダビガトランを内服中であった.農作業の積載中,右胸部痛が出現し,右上肢挙上困難となり,翌日に救急外来を受診した.初診時同部位に発赤腫脹を認めた.CTでは乳房領域の皮下脂肪織濃度上昇,大胸筋の腫脹を認めたが,遊離ガスは認めなかった.抗凝固薬内服に伴う筋肉内出血を疑ったが,受診5時間後に血圧低下をきたし全身管理となった.筋膜生検・Gram染色・溶連菌キット検査にてA群溶血性連鎖球菌感染による壊死性筋膜炎と診断し,抗菌薬(VCM,TAZ/PIPC,CLDM)の投与,右乳房を中心に広範囲debridementを施行した.後日,血液/組織培養でも同菌が同定された.治療に反応せず術後1日目に死亡した.

    壊死性筋膜炎は四肢に発症することが多く,体幹発症は稀であり診断が難しい.本症例から壊死性筋膜炎の診断,治療,対応について考察する.

  • 武藤 泰彦, 稲葉 毅, 加藤 昌弘, 菊山 みずほ, 甲斐崎 祥一
    2019 年 80 巻 4 号 p. 675-680
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    血性乳頭分泌を主訴に来院した,45歳の女性.マンモグラフィーでは有意な所見を認めなかったが,乳腺超音波検査で右乳房内側上方の乳管拡張が著明で一部に1cmほどの充実腫瘤を形成していた.病変の広がる腺葉の範囲を同定する目的で乳管造影を行った.乳管に造影剤を注入した後にCTで撮像することで乳腺内の拡張乳管の広がりを立体的に描出できた.乳管洗浄細胞診でクラスVと診断された.一部に浸潤巣を伴う非浸潤性乳管癌疑いと診断し,確定診断のための生検と治療を兼ねて乳管腺葉区域切除術を施行した.3D-CT乳管造影画像を実物大に印刷し,手術時に病変の範囲を体表に投影して切除範囲決定の参考とした.広範に広がる非浸潤性乳管癌と一部浸潤して硬癌となっていた病変を一元的に切除しえた.病変の範囲がわかりにくい非浸潤性乳管癌症例で乳管腺葉区域切除術を行う際に有効な手法と考える.

  • 浅井 はるか, 小倉 廣之, 髙塚 大輝, 淺野 祐子, 中村 明子, 椎谷 紀彦
    2019 年 80 巻 4 号 p. 681-685
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    術前ホルモン療法によって病理学的完全奏効を得た乳癌症例を経験した.症例は82歳,女性.外陰部Paget病精査のCT検査で左乳房A領域に径14mm大の腫瘤を指摘され,当科を受診した.針生検にて浸潤性乳管癌,ER陽性,PgR陽性,HER2/2+,cT1cN0M0,Stage Iと診断した.Paget病の治療を優先するため,乳癌に対して術前ホルモン療法として,アナストロゾール投与を開始した.治療開始7カ月時点で腫瘤径は11mmと軽度縮小したが,その後縮小傾向を示さず,14カ月目に左乳房切除術とセンチネルリンパ節生検を施行した.術後病理所見で遺残癌細胞を認めず,完全奏効と診断した.術後1年の時点で再発を認めず,ホルモン療法を継続している.

  • 岡本 真穂, 長内 孝之, 佐藤 栄吾, 笠原 舞, 小田 剛史
    2019 年 80 巻 4 号 p. 686-688
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    インドシアニングリーン(以下ICG)蛍光造影法にて局所再発病変を確認した乳癌を経験したので報告する.

    症例は,69歳の女性.57歳時に右乳癌(cT2,35mm,N0,M0)に対して術前化学療法(EC/Doc)実施後,乳頭乳輪温存皮下乳腺切除,同時組織拡張器挿入(一次二期再建実施)を施行した.術後ホルモン治療を終了し,経過観察中,術後12年目に同側B領域皮膚に軽度の硬結を認め,生検にて乳癌の局所再発と診断した.インプラントの影響で皮膚の数箇所に瘢痕を認めて多発病変との鑑別を要したため,ICG蛍光造影法を用いた術中ナビゲーションを参考にしつつ皮膚切除線を決定した.

    局所再発に対する切除範囲の決定に,ICG蛍光造影法を用いた術中ナビゲーション手術は有用な手技である.

  • 安野 佳奈, 吉留 克英, 下 登志朗, 鳥 正幸, 辻本 正彦
    2019 年 80 巻 4 号 p. 689-693
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    HER2陽性乳癌脳転移症例に対して集学的治療により長期生存を得られた2例を経験した.症例1は59歳の女性,右乳房腫瘤を主訴に受診しHER2陽性乳癌多発骨転移の診断で薬物療法や放射線治療を行い,2年後に多発脳転移を認めた.転移性脳腫瘍に対して手術後,γナイフ治療や薬物療法を施行し初診時から10年の生存を得ている.症例2は69歳の女性,体幹失調を自覚され受診しHER2陽性乳癌脳転移の診断.転移性脳腫瘍に対して手術後,γナイフ治療や薬物療法を施行し病勢安定のため無治療で8年間経過観察し新規再発を認めていない.初診時より13年の生存を得ている.HER2陽性乳癌脳転移症例の予後は極めて不良であり,治療に難渋することが多い.脳転移後の治療目的は症状コントロールやQOL改善が目標となることが多いが,集学的治療により長期生存が得られることがある.

  • 三島 秀樹, 松永 裕樹, 石川 進
    2019 年 80 巻 4 号 p. 694-699
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    オープンステントグラフトを延長して手術を行った多発胸部大動脈瘤の2例を報告する.症例1は67歳,女性.CTでは大動脈弓部から外側にかけて73mmの嚢状瘤と横隔膜レベルの下行大動脈に前方へ突出する71mmの大動脈瘤を認めた.胸痛があり,切迫破裂として準緊急で手術を行った.症例2は82歳,男性.B型解離保存的治療後,腹部大動脈瘤Y型人工血管置換術後で,経過観察CTにて遠位弓部大動脈瘤および胸腹部下行大動脈瘤が拡大傾向となった.2例とも瘤が弓部分枝付近まで進展していたため,ステントグラフト手術は不適と考えられた.症例1は胸骨正中切開,症例2は左前側方開胸でアプローチした.いずれの症例も近位側を人工血管置換し,遠位側にはオープンステントグラフトを留置して一期的に治療した.本法は多発胸部大動脈に対する選択肢の一つと考えられる.

  • 浅井 宗一郎, 深谷 昌秀, 檜垣 栄治, 宮田 一志, 三浦 泰智, 梛野 正人
    2019 年 80 巻 4 号 p. 700-706
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は41歳,男性.2017年2月,胸痛があり近医を受診.精査で後縦隔嚢胞性病変が疑われ当院紹介となった.血液検査ではCA19-9 5,960U/mlと高値を呈し,上部消化管内視鏡検査では門歯より24-41cmにわたり粘膜が青紫色を呈した半周性の粘膜下隆起がみられた.また,超音波内視鏡で病変部は腫瘤として描出され,内部はモザイクパターンを呈し血腫の存在が考えられた.CTでは食道前面に83×41×115mm大の二房性の嚢胞性病変がみられ,食道を圧排して狭窄していた.食道嚢胞と診断したが,胸痛と食道狭窄による症状があるため3月に胸腔鏡下に嚢胞切除術を施行した.術後経過は良好で,術後10日目に退院した.組織学的に嚢胞内面に多列上皮を認め,また嚢胞壁に2層の筋層を有することからduplication cystと診断した.

  • 末次 智成, 田中 善宏, 坂野 慎哉, 今井 健晴, 山口 和也, 吉田 和弘
    2019 年 80 巻 4 号 p. 707-713
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,女性.胸のつかえ感を主訴に近医を受診し,食道胃接合部腺癌を指摘され当科紹介受診となる.初診時診断:GE 2型 cT3(SS),N0,M0 : cStage IIにて食道癌に準じて術前化学療法としてbiweekly-DCF療法を2コース施行した.著明な腫瘍縮小を得て術前診断:GE 0-IIc型 ycT1b,N0,M0 : ycStage Iにて初診から3カ月で腹腔鏡下下部食道胃全摘術,D2郭清,下縦隔リンパ節郭清,Roux-en Y再建を施行された.手術時間は388分,出血量は160gであった.術後15日で合併症なく退院した.病理結果は組織学的完全奏効であった.

    腺癌を対象としたDCFレジメンでのpCR例の報告はまれであり,さらに腫瘍縮小により腹腔鏡下での下部食道胃全摘術が可能となりR0切除された症例報告はないため,文献的考察を加えて報告する.

  • 渡部 愛, 東風 貢, 松野 順敬, 田部井 英憲, 楠美 嘉晃, 八尾 隆史, 藤井 雅志, 高山 忠利
    2019 年 80 巻 4 号 p. 714-718
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,女性.8年前に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行後再発なく経過していたが,ふらつきを主訴に当科を受診した.血液検査で著明な貧血を認め,上部消化管内視鏡検査で吻合部口側に巨大な易出血性の腫瘤を認めた.貧血の原因である腫瘍の悪性が否定できないため残胃全摘術を施行した.切除標本は最大径80mm大の有茎性ポリープ状の病変で,病理組織学的にstomal polypoid hypertrophic gastritis(SPHG)であった.SPHGは一般的にイモ虫状広基性ポリープと表現される肉眼所見が特徴的であり,本症例のように巨大な有茎性ポリープの形状を呈することは非常に稀である.本症例は有茎性SPHGの報告例では9例目であり,ポリープ径としては最大である.また,SPHGは癌の発生母地となり得るため,癌の併存が否定できない場合は診断的治療として内視鏡的あるいは外科的切除を考慮する必要がある.

  • 菅野 裕樹, 石川 博人, 橋本 和晃, 田中 啓之, 奥田 康司
    2019 年 80 巻 4 号 p. 719-723
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性.13年前に胃噴門癌に対して噴門側胃切除術が施行された.2017年2月,食思不振と倦怠感を主訴に前医を受診し,十二指腸乳頭部癌の診断で当科紹介となった.左胃動脈・短胃動脈・左胃大網動脈は既往手術で切離され,CTでは右胃動脈も描出されず,残胃血流は右胃大網動脈のみで維持されていると考えられた.2017年4月,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.右胃大網動脈遮断による残胃壊死の可能性を考え,右胃大網動静脈を温存した.術後2病日にドレーン排液が血性となり,CTで胃十二指腸動脈に仮性動脈瘤の形成を認めた.仮性瘤破裂による致死的合併症の危険性があり,残胃壊死の可能性を考慮した上で右胃大網動脈のコイル塞栓を行った.塞栓後の腹腔動脈造影では右胃大網動脈末梢側が造影され,残胃への側副血行路が確認された.その後,残胃壊死の所見は認めなかった.

  • 内川 和也, 平木 将紹, 池田 貯, 田中 聡也, 北原 賢二, 佐藤 清治
    2019 年 80 巻 4 号 p. 724-728
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は57歳の女性で,41歳時に胃癌に対して胃全摘術,Billroth II法型(友田変法)再建を施行された.術後8年目頃より食後に異臭を伴う曖気を自覚するとともに,著明な栄養障害となり,年に1回ほど中心静脈栄養管理やアルブミン製剤の投与などの入院加療を必要としていた.精査の結果,盲係蹄症候群と診断され,抗菌薬などでの加療を試みるも治療に抵抗性であり,術後16年目に当院を紹介された.外科的治療の適応と判断し,開腹下盲管切除を行ったところ,術後,長期にわたる病悩期間にもかかわらず,速やかに著明な栄養状態の改善が見られた.今回,胃全摘術後の長期にわたる盲係蹄症候群に対し盲管切除を行い劇的に改善した1例を経験したので報告する.

  • 乙供 茂, 佐藤 明史, 福富 俊明, 梶原 大輝
    2019 年 80 巻 4 号 p. 729-732
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は73歳,男性.腎盂腎炎発症の際に施行したCTを契機に主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍,進行幽門胃癌の診断となった.幽門側胃切除と膵全摘を同時に行うと残胃の動脈血流不足,静脈鬱滞などの問題を生じ得るため術式を検討した上で,幽門側胃切除+脾動静脈温存膵全摘を行った.幽門側胃切除と脾動脈切離を伴う膵切除を要する症例は,臨床的にも時折遭遇し,異時性発症に対して各々根治切除を行う報告はあるものの,幽門側胃切除+脾動静脈温存膵全摘を同時に行った症例の報告は未だなく,文献的考察を加えて報告する.

  • 淺井 聖子, 畑山 純, 真船 健一
    2019 年 80 巻 4 号 p. 733-738
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.黒色便を主訴に近医を受診し,貧血を指摘され,精査目的に当院紹介入院となった.上部消化管内視鏡検査と胸腹部骨盤部造影CT検査で多発肺,リンパ節転移を伴う十二指腸第4部癌と診断した.検査入院中に出血性ショックに陥り,開腹・小腸部分切除術を行い救命した.分子標的治療薬を併用した化学療法を施行継続し,1年以上経過した現在も無増悪生存中である.

    原発性十二指腸第4部癌は比較的まれで,予後不良な疾患ある.至適術式や化学療法の確立のために症例の蓄積が必要と考え,文献的考察を加えて報告する.

  • 竹内 瑞葵, 中川 真理, 福島 登茂子, 竹内 悠二, 大谷 泰介, 松尾 亮太
    2019 年 80 巻 4 号 p. 739-744
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳の女性で,1週間持続する右下腹部痛を主訴に来院した.腹部単純CT検査にて右骨盤腔内に約25mmの周囲脂肪織濃度上昇を伴った嚢胞性病変を認めたが,虫垂の同定はできなかった.炎症所見は軽度だったが,腹腔内膿瘍もしくは婦人科疾患を疑い入院加療とした.入院翌日に右下腹部痛の増強と腹膜刺激症状を認めたため,緊急審査腹腔鏡を施行した.骨盤腔や右傍結腸溝周囲に膿性腹水が充満し,終末回腸近くにMeckel憩室を認めた.憩室先端は卵巣と膿瘍を形成し,一部虫垂との癒着を認めた.Meckel憩室炎による限局性腹膜炎と判断し,憩室切除と腹腔内洗浄ドレナージ,虫垂切除を施行した.病理組織標本では卵巣と癒着していた憩室先端は全層に渡る壊死を認めた.病理組織学的な憩室粘膜上皮の脱落,壁構造の断裂と臨床所見からMeckel憩室炎の卵巣への穿通が疑われた.

  • 伊良部 真一郎, 安冨 淳, 宇田川 郁夫
    2019 年 80 巻 4 号 p. 745-749
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    毛髪胃石は,異食症などにより経口摂取された毛髪が胃内で固形化したものであり,本邦では比較的稀な疾患である.中でもRapunzel症候群は,巨大な毛髪胃石の一部が索状に伸び小腸まで達したもので,極めて稀な病態とされている.今回われわれは,Rapunzel症候群による小腸内毛髪塊が先進部となり腸重積をきたした症例を経験したので報告する.症例は9歳,女児.食後の腹痛を主訴に救急受診し,腸重積の疑いでSingle Incision Laparoscopic Surgery (SILS)にて手術を施行した.術中所見では,Treitz靱帯から40cmの空腸に重積を認め,Hutchinson手技にて整復を行った.内腔に固い腫瘤を認めたため腸壁切開すると,胃内から空腸まで連続する毛髪塊を認めた.上部消化管内視鏡による摘出は困難であり,胃壁を切開し巨大胃石を摘出した.術後経過は良好であった.

  • 諸藤 教彰, 大倉 康男
    2019 年 80 巻 4 号 p. 750-754
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,男性.17年前に虫垂切除術を施行され,繰り返す手術創感染のため当科紹介となった.腹部造影CTで手術創直下の腹腔内に液体貯留を認め,瘻孔造影検査で回腸が造影されたため腸管皮膚瘻と診断し,手術を施行した.瘻孔は虫垂切除断端と回腸と癒着していたため,盲腸末端および回腸の部分切除術を施行した.術後病理組織検査で低異型度虫垂粘液性腫瘍(low-grade appendiceal mucinous neoplasm:以下LAMN)と診断された.LAMNは腹膜偽粘液腫をきたす可能性もある臨床的に悪性の腫瘍である.遺残虫垂から発生したLAMNは稀であり,さらに自験例のように腸管皮膚瘻を呈することは非常に稀である.虫垂切除断端からの瘻孔形成を認めた場合,虫垂腫瘍の可能性も考慮して慎重に外科的治療を行う必要があると思われた.

  • 神崎 雅之, 古手川 洋志, 久米 達彦, 堀内 淳, 明比 俊
    2019 年 80 巻 4 号 p. 755-759
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    圧縮空気の経肛門的挿入による広範囲の大腸損傷を早期手術介入により診断し,救命した症例を経験した.症例は33歳の男性で,業務中に同僚からエアコンプレッサーを衣服の上から肛門部にあてられた.直後より腹痛と血便を認めたため,当院に救急搬送された.左腹部を中心に圧痛を認め,当院に搬送後も血便を認めた.腹部造影CTで脾彎曲部結腸に腸管壁在気腫を認めた.回盲部と骨盤内に少量の腹水の貯留を認めた.腹腔内遊離ガスは無かった.診断目的に手術の方針とし,腹腔鏡を用いて腹腔内の観察を行った.広範囲の大腸に漿膜下血種を認めたため,開腹移行とした.上行結腸からS状結腸と直腸に漿膜筋層の損傷と漿膜下血種を認め,穿孔は認めなかった.漿膜筋層損傷部は縫合修復し,回腸に人工肛門を造設した.圧縮空気の経肛門的挿入で,穿孔を伴わない広範囲の腸管損傷をきたした症例を経験した.診断も含めた早期の手術介入が有効と考える.

  • 塚原 哲夫, 林 英司, 河原 健夫, 青山 広希, 服部 行紀, 澤崎 直規
    2019 年 80 巻 4 号 p. 760-765
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,女性.腹痛で前医を受診し,腹部CTで下行結腸腫瘍による腸閉塞と診断され,当院へ紹介となった.下部消化管内視鏡検査で下行結腸に全周性狭窄を伴う病変を認め,金属ステントを留置した.造影CTでは下腸間膜静脈(IMV)腫瘍栓と大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた.以上より,IMV合併切除を伴う左結腸切除術を施行した.手術所見ではIMV周囲は索状に硬化し,口側腸管には著明な壁肥厚を認めた.病理組織学的所見ではIMV内の腫瘍栓は原発巣と同様の中分化腺癌を認めた.術後化学療法として,mFOLFOX6を22コース施行したところで大動脈周囲リンパ節は不明瞭となり,44コース施行後,中止した.手術から52カ月が経過した現在,再燃なく生存中である.IMVに腫瘍栓を伴った大腸癌はまれであり,手術時には腫瘍栓を遺残,遊離させないように注意しながら,完全切除することが重要である.

  • 松澤 夏未, 風間 伸介, 西村 ゆう, 佐藤 一仁, 石井 博章, 西澤 雄介, 西村 洋治
    2019 年 80 巻 4 号 p. 766-772
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    73歳,男性.肛門腫瘍からの出血を主訴に近医へ救急搬送された.肛門に小児頭大腫瘍を認め,病理検査から中分化腺癌と診断された.大腸内視鏡検査でS状結腸癌を認め,肛門腫瘍と同じ中分化腺癌の像を呈しており,精査加療目的に当院へ紹介された.造影CT検査で傍大動脈リンパ節腫大を複数認め,PET-CT検査で同部への集積を認めた.肛門腫瘍とS状結腸癌が同じ組織像を呈したことから,S状結腸癌の同時性肛門転移と診断した.傍大動脈リンパ節転移を認めるものの,肛門腫瘍の出血,疼痛緩和のため姑息的に切除する方針とし,腹会陰式直腸切断術,皮弁形成術を施行した.病理診断はS,type2,tub2,pT3(SS),int,INFb,ly3,v1,pN3,cM1b(LYM,OTH)であった.化学療法を継続し,術後1年で無増悪生存中である.同時性肛門転移を契機に診断されたS状結腸癌を経験したので文献的な考察を加え,報告する.

  • 石橋 慶章, 尾崎 邦博, 林田 良三, 白水 良征, 藤田 文彦, 赤木 由人
    2019 年 80 巻 4 号 p. 773-778
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,女性.下血を主訴に来院し下部消化管内視鏡検査で直腸癌と診断され,加療目的で当院紹介.精査で直腸癌(Ra) Type2 cT3N1M0 Stage IIIと診断した.また,術前精査で左骨盤腎を認めるほか右卵巣腫瘍も見られた.骨盤腎は岬角のレベルに存在しており直腸後壁の剥離に難渋することが予測されたため,事前にポート位置のsimulationを行い手術に臨んだ.術式は腹腔鏡下低位前方切除+D3郭清+右卵巣腫瘍切除+回腸人工肛門造設術を行った.術後,特に問題なく経過し退院となった.術前の詳細な画像評価およびポート位置の工夫により,骨盤腎併存直腸癌でも安全に切除可能であると考えられた.骨盤腎を合併した直腸癌手術の報告は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 宇都宮 健, 坂元 克考, 松井 貴司, 高井 昭洋, 小川 晃平, 高田 泰次
    2019 年 80 巻 4 号 p. 779-785
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    過粘稠性Klebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍は転移感染症として,重篤な経過を辿ることがある.膵頭十二指腸切除術後に繰り返した過粘稠性Klebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍の1例を経験したので報告する.

    症例は76歳,女性.膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を施行した.合併症なく,術後25日目に退院したが,退院後2週間目に発熱を主訴に近医を受診し,肝膿瘍と診断され,当院へ転院した.腹部CTで肝S3に径7cmの肝膿瘍を認め,経皮的ドレナージと抗菌薬治療を開始した.肝膿瘍の診断から26日目に退院したが,退院日から16日目に再度発熱を認めた.腹部CTでS8に径4cmの肝膿瘍を認め,ドレナージと抗菌薬治療を行い,再々入院25日目に退院した.退院後,長期抗菌薬投与を行い,再燃は認めていない.いずれも膿汁培養から過粘稠性Klebsiella pneumoniaeが検出された.

    過粘稠性Klebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍の治療には抗菌薬の長期投与が重要と考えられた.

  • 小関 孝佳, 脊山 泰治, 和田 郁雄, 真栄城 剛, 宮本 幸雄, 梅北 信孝
    2019 年 80 巻 4 号 p. 786-790
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性.6年前に肝細胞癌に対し,尾状葉切除術を施行した(中分化型肝細胞癌,pT2N0M0,pStage II).他院で経過観察中に腫瘍マーカーの上昇があり,当科紹介となった.CTで中左肝静脈根部に肝細胞癌再発を認め,縦隔内にも2箇所転移を疑う腫瘤を認めた.肝細胞癌再発・縦隔リンパ節転移と判断したが,限局しており切除の方針とし,拡大左肝切除・胸骨正中切開による縦隔腫瘍切除を施行した.病理結果は中分化型肝細胞癌局所再発・縦隔リンパ節転移であった.術後3カ月で気管分岐部に増大傾向の腫瘤が出現し,縦隔リンパ節転移が疑われた.単発で新出病変の出現がないことから切除適応と判断し,再発切除時から13カ月後に右開胸で縦隔腫瘍を切除した.病理は縦隔リンパ節転移の診断であった.術後腫瘍マーカーは正常化し,以降4年間,無再発生存中である.肝細胞癌縦隔リンパ節転移は多発でも限局していれば切除も選択肢と考えられた.

  • 長尾 拓哉, 湯浅 典博, 竹内 英司, 三宅 秀夫, 宮田 完志, 伊藤 藍
    2019 年 80 巻 4 号 p. 791-797
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は74歳の女性で,心窩部痛を主訴に当院を受診した.血液検査にてビリルビン,肝胆道系酵素,CEA,CA19-9の上昇を認めた.腹部造影CTでは,造影効果を伴う壁肥厚を下部胆管に認め,上部胆管の拡張を認めた.ERCPにて下部胆管の不整狭窄を認め,生検で腺癌と診断された.遠位胆管癌と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的に腫瘍は腺癌と神経内分泌癌の成分が混在し,いずれも腫瘍の30%以上を占めたことから,混合型腺神経内分泌癌と診断された.術後補助化学療法としてCDDP+CPT-11計4コースを施行したが,術後19カ月で腹膜播種再発を認め,現在,化学療法を施行している.肝外胆管原発混合型腺神経内分泌癌の本邦報告は10例で,肝再発が多く,予後不良である.本疾患では個々の症例の臨床病理学的特徴を考慮したうえで治療にあたる必要がある.

  • 岩下 幸平, 小林 敦夫, 高田 厚, 河原 正樹
    2019 年 80 巻 4 号 p. 798-803
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は39歳,女性.前日からの腹痛と発熱,水溶性下痢を主訴に来院.著明な腹膜刺激症状と炎症反応異常高値を認め,急性汎発性腹膜炎と診断した.画像検査では,消化管穿孔や腸管虚血などの所見は認めず,上記症状の原因として原発性腹膜炎を疑った.厳密な循環・呼吸管理,広域抗菌薬,カテコラミン,持続的血液濾過透析(以下CHDF)とエンドトキシン吸着療法(以下PMX-DHP)を併用した集中治療を開始した.第4病日の血液培養にてA群溶連菌が検出され,劇症型溶連菌感染症による原発性腹膜炎と診断した.外科的治療の必要性を考慮しつつ厳重な観察下に上記治療を行ったが,その後全身状態は徐々に改善し,第23病日に退院となった.劇症型溶連菌感染症による原発性腹膜炎は稀な疾患であるが,大半の症例において開腹洗浄ドレナージなど外科的治療が施行されており,保存的治療による救命例の報告はない.若干の文献的考察を交えて報告する.

  • 所 智和, 堀川 直樹, 眞鍋 高宏, 宮永 章平, 福島 亘, 薮下 和久
    2019 年 80 巻 4 号 p. 804-808
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は65歳,男性.15年前に左鼠径ヘルニアと診断されたが放置していた.次第に腫脹が増大し,手術を希望して当科を受診した.術前に下部消化管内視鏡検査の希望があり施行した.検査中に内視鏡の挿入・抜去が困難となり,同時に下腹部痛が増強した.左鼠径部に硬い半球状膨隆を認め,緊急CT検査ではヘルニア嚢内にS状結腸と内視鏡が嵌頓していた.直ちに用手的整復を試みるも困難であり,緊急手術の方針とした.全身麻酔下に前方到達法にてヘルニア嚢を切開,少量の血性腹水を認めたが,S状結腸壁に血行障害は認めなかった.漿膜面の一部に挫滅創を認めたため修復した.経肛門的に挿入されている内視鏡を愛護的に抜去した後にS状結腸を腹腔内へ還納し,direct Kugel 法にてヘルニアを修復した.下部消化管内視鏡の嵌頓は稀な偶発症ではあるが,ヘルニア患者の検査における合併症の一つとして認識しておくことが重要である.

  • 東本 昌之, 出先 亮介, 松尾 洋一郎, 小倉 修
    2019 年 80 巻 4 号 p. 809-813
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.2018年4月頃より出現した右鼠径部腫瘤を主訴に同年5月,当院受診となる.腹部所見,腹部CTより右鼠径ヘルニアの診断で,同年6月にTAPPを施行した.術後3日目より右鼠径部腫瘤が出現.右鼠径ヘルニア再発の診断で,術後7日目に待機的に手術を施行した.再手術時,腹腔鏡での観察では腹膜縫合部の離開はなく,ヘルニア嚢を思わせる腹壁の凹みは同定できず,初回手術時のメッシュも十分に展開されていた.鼠径部切開法を併施したところ,II-1型内鼠径ヘルニアの位置に遺残した腹膜前脂肪が腫瘤の原因であった.遺残腹膜前脂肪が腫瘤を形成し,さらにその切除を要した例の報告はない.このような合併症の存在を周知することは,腹腔鏡下ヘルニア修復術の合併症予防の観点からも意義あることと考え報告する.

  • 木谷 嘉孝, 大倉 遊, 田中 毅, 上野 正紀, 宇田川 晴司
    2019 年 80 巻 4 号 p. 814-817
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は56歳,男性.右側腹部の膨隆を主訴に来院し,右Spigelianヘルニアの診断にて手術の方針となった.腹腔内到達法(transabdominal preperitoneal repair;TAPP法)にて腹腔内を観察すると,右Spigelianヘルニアに加え,両側外鼠径ヘルニアの併存を認めた.トリミングしたメッシュと通常のメッシュを組み合わせ,右Spigelianヘルニアと右外鼠径ヘルニアの修復を同時に行い,左側は通常通り修復を行った.腹腔鏡では,術前診断し得ない他のヘルニアの併存を確認でき,ヘルニア門の大きさを正確に把握することに関しても有用であった.

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