2019 年 80 巻 4 号 p. 663-667
鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(mineralocorticoid responsive hyponatremia of the elderly:以下MRHE)は,著明な低ナトリウム血症をきたす疾患である.今回,膵体尾部切除術後に,MRHEを発症した症例を経験したので報告する.症例は70歳,男性.血糖コントロール悪化の精査で膵尾部に腫瘍を指摘され,当院へ紹介された.腹部造影CT検査,EUS-FNA検査で切除可能膵尾部癌と診断.腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.術後15日目に著明な低ナトリウム血症(114mEq/l)を認めた.血清コルチゾールが正常で,脱水所見を認めたことより,MRHEと診断し,鉱質コルチコイド製剤の内服を開始した.術後24日目には,血清ナトリウム値が138mEq/lまで改善し退院した.その後,血清ナトリウム値は正常範囲で推移し,退院3カ月後には鉱質コルチコイド製剤は終了した.