2019 年 80 巻 4 号 p. 668-674
症例は83歳,女性.糖尿病,徐脈頻脈症候群に対してペースメーカー埋込術後,ダビガトランを内服中であった.農作業の積載中,右胸部痛が出現し,右上肢挙上困難となり,翌日に救急外来を受診した.初診時同部位に発赤腫脹を認めた.CTでは乳房領域の皮下脂肪織濃度上昇,大胸筋の腫脹を認めたが,遊離ガスは認めなかった.抗凝固薬内服に伴う筋肉内出血を疑ったが,受診5時間後に血圧低下をきたし全身管理となった.筋膜生検・Gram染色・溶連菌キット検査にてA群溶血性連鎖球菌感染による壊死性筋膜炎と診断し,抗菌薬(VCM,TAZ/PIPC,CLDM)の投与,右乳房を中心に広範囲debridementを施行した.後日,血液/組織培養でも同菌が同定された.治療に反応せず術後1日目に死亡した.
壊死性筋膜炎は四肢に発症することが多く,体幹発症は稀であり診断が難しい.本症例から壊死性筋膜炎の診断,治療,対応について考察する.