2019 年 80 巻 5 号 p. 953-956
71歳,男性.自宅で心停止(初期波形:心室細動)となり,救急隊により胸骨圧迫を含む心肺蘇生術が開始され当センターへ搬送となった.心停止から29分後に心拍再開,緊急冠動脈造影では有意狭窄なく,抗凝固薬と抗血小板薬を開始した.ICU入室前に撮影した胸腹部単純CTでは臓器損傷を示唆する所見はなかった.ICU入室9時間後より,血圧低下と貧血が出現したためエコー検査を行ったところ,腹腔内に液体貯留を認めた.造影CT撮影した結果,肝周囲に液体貯留と肝S3/4の肝鎌状間膜付着部近傍に造影剤の血管外漏出を認め,胸骨圧迫に伴う肝損傷と診断し,動脈塞栓術を行い止血した.その後,循環動態は安定し,神経学的予後良好で第17日病日に転院となった.胸骨圧迫による肝損傷の頻度は高くないものの,初診時診断は難しく,遅発性に急激なバイタルサイン悪化をきたす症例が存在するため,入院後も注意深く経過観察する必要がある.Hb低下を伴う循環動態の悪化が出現した場合は,胸骨圧迫による肝損傷を念頭に置き,造影CTで早期診断することが望まれる.