2020 年 81 巻 11 号 p. 2166-2170
症例は48歳,女性.検診で右乳癌指摘され,精査の結果,左にも乳癌が見つかり,両側同時性乳癌の診断となり,両側乳房切除術,センチネルリンパ節生検(sentinel node biopsy:以下,SNB)および組織拡張器(tissue expander:以下,TE)による一次再建術を行った.術後5日目(post operative day5:以下,POD5)より両側のドレーンからの排液が白濁し,排液中の中性脂肪が高値であることから乳糜漏と診断した.POD6より脂肪制限食に変更し,圧迫効果を期待してTEに追加注入を行った.内部からの圧迫療法の効果は得られなかったが,徐々に脂肪制限を強化することで排液量は減少し,POD18に両側ドレーンを抜去し退院となった.乳癌術後の乳糜漏は稀であり,SNB後やTE挿入後の報告はさらに少なく,両側に乳糜漏をきたした報告はこれまでにない.しかしながら,合併症の一つとして乳糜漏の存在を認識することは,早期診断ならびに早期の治療介入へつながるため,重要である.