日本臨床外科学会雑誌
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症例
近接する糖尿病性乳腺症のために広がり診断に苦慮した乳癌の1例
日下部 恵梨菜村上 朱里西山 加那子山下 美智子福島 万奈亀井 義明
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キーワード: 乳癌, 糖尿病性, 乳腺症
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2186-2191

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抄録

症例は70歳,女性.2型糖尿病に対し,2年前からインスリン治療中であった.数日前より左乳房腫瘤を自覚し前医を受診.針生検にて浸潤性乳管癌と診断され,加療目的に当院を受診した.左乳頭外側に2cmの腫瘤を触知,MMGで乳頭直下から外側にFADを認めた.超音波検査では約2cmの境界不明瞭な低エコー域を認めた.左乳癌cT2N0M0 Stage II Aと診断し,左乳房全切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.割面のマクロ像では,術前画像と一致して乳頭直下から外側かつ胸壁側まで広がる約2.5cmの病変を認めたが,組織学的には乳頭直下の約1cm程度の部分のみに癌が存在し,その胸壁側の領域は糖尿病性乳腺症で悪性所見は認めなかった.病理学的ステージはpT1bN0M0 Stage Iであった.今回われわれは,近接する糖尿病性乳腺症のために広がり診断に苦慮した乳癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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