日本臨床外科学会雑誌
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症例
甲状腺腺腫様結節との鑑別に苦慮した頸部気管支原性嚢胞の1例
清水 忠史新宮 聖士網谷 正統冨永 義明佐野 健司
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2196-2200

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抄録

今回,頸部に発生して甲状腺腺腫様結節と鑑別を要した気管支原生嚢胞の1例を報告する.症例は70歳,男性.息苦しさ,頸部圧迫感,および嗄声を主訴に当科を受診した.超音波検査で甲状腺左葉下極に分葉状で隔壁構造を伴う40×29mm大の嚢胞性腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診では粘稠度の高いコロイド成分のみを認めた.以上より,頸部から上縦隔に進展する甲状腺腺腫様結節と診断し,症状も鑑みて腫瘤を含め甲状腺左葉切除術を施行した.病理組織学的検査では嚢胞壁が多列線毛上皮に覆われており,周囲に気管支軟骨を認め, 気管支との交通のない気管支原生嚢胞の診断であった.術後嗄声や息苦しさは徐々に改善した.気管支原生嚢胞は中縦隔,特に気管分岐部周囲に多く発生するといわれるが,稀に頸部や胸壁,横隔膜,食道周囲等にも発生するといわれている.本症例は頸部に発生した気管支原生嚢胞であった.

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