日本臨床外科学会雑誌
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症例
嚢胞性変化を伴う肺過誤腫の1例
大島 祐貴目次 裕之荒木 邦夫
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2201-2205

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抄録

症例は70歳,男性.検診異常で当院を受診.CTで左肺上葉に不均一な壁肥厚を伴う18mm大の嚢胞病変を認めた.7年前のCTでは同部に7mm大の嚢胞性病変がみられ,長期経過で嚢胞の増大と嚢胞壁の肥厚をきたした疾患と考えられた.悪性の可能性が否定できず,診断・治療目的に胸腔鏡下左肺部分切除術を実施した.術中迅速病理検査では軽度の異型性を有する腫瘍性病変と診断され肺癌の可能性が否定できなかったため,左肺上区域切除を追加した.病理所見では嚢胞成分は拡張した細気管支であり,その周囲に異型の乏しい気管支腺様の腺管が増生し平滑筋が不規則に介在していた.軟骨成分はみられなかった.以上より,気管支腺優位の増殖を示す肺過誤腫と診断した.肺過誤腫は石灰化や脂肪の存在が画像上特徴的な所見とされ,多くは境界明瞭な充実結節影を示す.本症例は嚢胞性変化を伴い結節影を欠く稀有な肺過誤腫であり診断に難渋したため,文献的考察を交え報告する.

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