2020 年 81 巻 11 号 p. 2218-2224
症例は70歳の男性.ペースメーカーのリード感染による心嚢内膿瘍に対して,9年前に他院で膿瘍掻爬,大網充填術が行われた既往がある.食思不振,嘔気,嘔吐を主訴に前医を受診し,精査加療目的に当院へ紹介となった.CTでは左横隔膜陰影が断裂しており,同部位から胃が胸腔内に陥入していた.上部消化管造影検査ではupside down stomachを認め,十二指腸への造影剤流出は認めたが,胃内で停滞貯留していた.以上より左横隔膜ヘルニアと診断し,腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.術中所見では,ヘルニア門は大網貫通部から離れて左側にあり,5×5cmの大きさであった.胃や大網など胃周囲組織と胸腔内臓器の癒着は認めなかった.ヘルニア門を形成する横隔膜に脆弱性は認めず,直接縫合で閉鎖した.術後54カ月が経過したが,再発は認めていない.