2020 年 81 巻 11 号 p. 2225-2231
胃原発の消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor,以下GISTと略記)の肝転移治療中に,胃癌を発症し切除した症例を経験した.症例は50歳の女性で,検診で発見された胃GIST切除後3年目に多発肝転移を認め,肝切除を施行.その後,残肝再発に対して合計5回の経皮的ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation,以下RFA),14年にわたるイマチニブ内服,残肝再切除などの治療を繰り返し行ってきた.原発巣切除後20年目に下大静脈近傍の肝再発巣に対して開胸マイクロ波治療(microwave coagulation therapy,以下MCT)を計画し,術前に施行した上部消化管内視鏡検査にて胃癌が発見された.開胸MCT後に胃全摘を施行,病理組織学的検査では,tub2/por2,pT3(SS),pN1(2/10),Stage II Bであった.術後はイマチニブを休薬し,胃癌術後補助化学療法としてS-1を内服し,術後1年経過時点で無再発である.当院の胃GIST症例17例中で消化器癌を併発した症例が5例(29.4%)あり,再発胃GIST症例においても異時性多重がん(重複癌)を念頭に置いた慎重な経過観察が重要であると思われた.