2020 年 81 巻 11 号 p. 2309-2316
原発性肝肉腫は原発性肝悪性腫瘍の約0.2%といわれ,その多くは血管内皮腫や悪性間葉腫であり,肝線維肉腫は稀である.症例は62歳,女性.発熱を主訴に受診し,入院時に施行した造影CTで,肝後区域に92mmの周囲より遷延性に造影される内部不均一な腫瘍を認めた.MRIではT1で低信号,T2で高信号を示し内部に出血を認めた.入院19日目に施行したCTで腫瘍径は102mmと急速な増大傾向を認めたため,25日目に肝拡大後区域切除術を施行した.病理所見では結合織性の被膜を有する結節状の腫瘍を認め,中央に出血と壊死を伴っていた.組織学的に紡錘形腫瘍細胞の特徴的配列である魚骨様形態,herringbone patternを認め,肝線維肉腫と診断した.術後2年経過した現在,無再発生存中である.肝線維肉腫は,本症例のように急速に増大することもあるが,積極的な切除により長期予後も期待できる可能性が示唆された.