日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前に肝内胆管癌と鑑別した胆管内進展を伴う大腸癌肝転移の1例
与儀 憲和林 達也小坂 至東原 琢船越 薫子霧生 孝弘森田 泰弘
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2317-2324

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抄録

症例は73歳,男性.直腸癌に対し,腹腔鏡下低位前方切除術を施行(tub1,pT3,ly0,v1,pN0,pStage II).術後2年6カ月のCTで肝S7に限局した胆管拡張が出現し,2カ月後のCTでB7内腔に充満する腫瘤を認めた.経口胆道鏡検査でB7内腔から進展する乳頭状腫瘍を認め,生検では類円形の腫大濃染核を有する異型細胞が不整腺管構造を呈して増殖しており,腺癌の像であった.肝内胆管癌が鑑別に挙がったが,組織像が既往直腸癌と類似していたこと,免疫染色でCK7(-),CK20(-),CDX2(+)を示し,既往直腸癌の染色パターンと一致したことから,胆管内進展を伴う大腸癌肝転移と診断し,右肝切除術を施行した.

胆管内進展を伴う大腸癌肝転移は肝内胆管癌との鑑別が臨床上問題となる.正確な術前診断は治療戦略を立てる上で重要であり,経口胆道鏡による観察および直視下の生検,生検組織の免疫染色は有用と考える.

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