日本臨床外科学会雑誌
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症例
粘液癌の像を呈した胆嚢原発印環細胞癌の1例
月本 優美住谷 隆輔小野 英哉斗永井 健熊澤 慶吾河田 悠介大出 貴士青柳 信嘉
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キーワード: 胆嚢癌, 印環細胞癌, 粘液癌
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2325-2330

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抄録

症例は54歳,女性.乳癌術後のフォローCTで胆嚢腫瘤を指摘された.病変は1cmを超え短期間での増大を認めたことから,胆嚢癌を疑い手術を施行した.術中所見では,病変周囲に播種や肝実質への浸潤を疑う病変はみられず,胆嚢床付近に硬結を触れたが漿膜の引きつれはなかった.術中迅速病理診断では胆嚢管切除断端陰性で,拡大胆嚢摘出術およびリンパ節郭清を施行した.病理組織診断は,粘液癌の像を示す印環細胞癌で,局所進展度はpT2(SS)であった.術後化学療法としてS-1を導入し,術後3カ月で無再発である.原発性胆嚢癌のうち,印環細胞癌は約1%と比較的稀な組織型であり,粘液癌の像を示す印環細胞癌は極めて稀で,本邦では本症例が9例目である.印環細胞癌はリンパ節転移の頻度が高く予後不良とされており,本症例でもリンパ節に転移がみられた.胆嚢印環細胞癌の臨床病理学的特徴は十分解明されておらず,今後も症例の蓄積が必要と考える.

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