日本臨床外科学会雑誌
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症例
胆嚢腺筋腫症に併存し多中心性発癌をきたした胆嚢癌の1例
長野 菜月前田 孝河合 清貴高木 健司川井 覚神谷 里明
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2331-2335

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抄録

症例は80歳,女性.近医で施行された定期健診の腹部超音波検査で胆嚢内に隆起性病変を認め,紹介となった.精査目的に造影CTを施行すると,胆嚢底部は腫大緊満し,内腔に複数の広基性隆起性病変を認めた.MRCPでは胆嚢体部に限局性のくびれと嚢胞構造を認め,分節型の胆嚢腺筋腫症が併存していた.また,隆起性病変はその底部側にのみ認められた.分節型胆嚢腺筋腫症とそれに併存した胆嚢癌と診断し,手術を施行した.

手術は開腹胆嚢摘出術,肝十二指腸間膜リンパ節郭清を施行した.術後経過は良好で退院となった.検体を確認すると輪状狭窄より底部側に複数の隆起性病変を認めた.組織像はpapillary adenocarcinomaで,すべて上皮内癌であった.一部,底部のRASに沿った部位では漿膜下層に進展していた.底部側の他の粘膜にも所々異型を認め,底部全体が前癌状態と考えられた.分節型胆嚢腺筋腫症に併存し,多中心性に発癌をきたした非常に稀な1例を経験した.

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