2020 年 81 巻 11 号 p. 2340-2345
症例は47歳,男性.9年前にsolitary fibrous tumor(SFT)に対して胃部分切除術,2年前に神経内分泌腫瘍に対して膵体尾部切除術の既往があり,WHO分類で膵NET(G2)であった.経過観察中に腹部造影CTにて左横隔膜下に腫瘍を認めた.造影効果に乏しく不整な腫瘤構造を認めた.腫瘍マーカーや血中ホルモン値に異常は認めなかった.神経内分泌腫瘍の再発を考慮して,ソマトスタチンシンチを施行したところ淡い集積を認めた.他に遠隔転移を認めず切除の方針として腫瘍の切除を行った.病理組織でSFTやNETとは異なり腹腔内デスモイド腫瘍であった.術後1年目で無再発である.デスモイド腫瘍は家族性大腸腺腫症に合併するタイプと手術など機械的刺激が誘因となるタイプが知られている.術前診断では確定診断が困難なことも多く切除を要することが多いが,腹腔内手術後の鑑別診断として考慮する必要がある.