日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝硬変による難治性腹水が原因で自然破裂をきたした成人臍ヘルニアの1例
佐野 直樹山田 圭一植田 貴徳小田 竜也
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2351-2355

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抄録

成人臍ヘルニアは比較的まれな疾患であるが,破裂症例は極めてまれである.今回われわれは,難治性腹水による慢性的な腹腔内圧上昇が原因で臍ヘルニアが破裂した症例を経験したため報告する.患者は71歳,女性.病因不明の肝硬変で通院中であった.2017年より腹水増加に伴う腹部膨満が出現し利尿薬を開始したが改善なく,腹水濾過濃縮再静注法を施行していた.2018年に施行したCTで臍ヘルニアを認め,その後ヘルニア門が増大したが,肝硬変に伴う全身麻酔のリスクが高く経過観察していた.臍部は乳児頭大に膨隆し頂部に潰瘍形成を伴っていた.2019年に皮膚潰瘍が破綻し腹水が漏出したため外来を受診し,同日緊急で臍ヘルニア修復術を施行した.感染のリスクが高いと判断したため人工物は使用せずヘルニア門を単純閉鎖した.術後は腹水の厳密なコントロールを継続しており,半年間再発なく経過している.

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