2020 年 81 巻 2 号 p. 390-393
症例は85歳,男性.下肢閉塞性動脈硬化症に対してF-Fバイパス術の既往がある.右鼠径部膨隆を主訴に受診した.超音波検査では人工血管の直下にヘルニア内容物を認めた.右鼠径ヘルニアと診断し,3ポートを用いた腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行した.術前に人工血管走行のマーキングを行い,トロッカー挿入部は人工血管が露出しないように十分距離を置くことに留意した.術後経過は良好であり,合併症なく退院した.下肢動脈硬化症に対する非解剖学的バイパス術の既往を有する患者に対する腹部手術では人工血管による手術創の制限,人工血管損傷や感染等のリスクがある.非解剖学的バイパス術後の鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡手術は,人工血管による創の制限を最小限にできる点,人工血管損傷および感染防止の点から有用であった.