2020 年 81 巻 3 号 p. 570-575
症例は22歳の初産婦.妊娠20週目に強い心窩部痛を主訴に当院を受診した.腹膜炎所見はなく血液検査上も特記すべき所見はなかったが,腹部単純CT・単純MRIにて胃小弯と肝左葉に囲まれた領域に境界明瞭な腫瘤影を認めた.発生部位は特定できなかったが,強い腹痛のため妊娠継続に支障が出ると判断し緊急手術を施行した.開腹所見では膵体部に嚢胞状の腫瘤を認め,膵嚢胞性疾患と判断した.正常膵尾部はごくわずかであり,脾動静脈温存脾温存膵体尾部切除を施行した.病理診断でsolid-pseudopapillary neoplasm(SPN)の診断に至りプロゲステロン受容体の免疫染色が陽性であった.術後経過は良好で37週目に健常男児を経腟出産した.妊娠中に症状を呈したSPNは大変稀であり,文献的考察を加えて報告する.